4.非日常へ1

 ……緑の、匂いがする……。


 っすらとした意識の中、まぶたの向こう側から自然の香りがした。


 沢山の木の囲まれているような気分。


 まるで、森の中にいるみたい。


 パチリ


 目を開けた。


「へ!?」

 

 本当に森の中にいた。


 めっちゃ木が生えてる。


 高層ビルのような太くて大きな木。


 こんなのジ〇リでしか見たことがない。


 私は沢山生えている木の一本にもたれかかって木の根の上に座っていた。


「私、何で森に……」


 焦りながらも、冷静になって考えようと記憶を辿る。


「……そっか……死んじゃったんだ、私」


 自分が熱中症で倒れた事を思い出した。


 助けは間に合わなかったみたい。


「はぁ……出来れば陽キャの人達みたいな青春を送りたかったな」


 幸の薄い人生だったと残念に思ったけど、そのおかげか、生にあまり未練を感じず、割とすんなり死を受け入れてしまった。


「長生きしたところで、私じゃ陽キャライフに縁はなかったよね。きっと彼氏だって出来なかったよ」


 開き直って周囲を見渡す。


 大きな木には少し驚いたけど、至って普通の森。


 THE大自然って感じで禍々しいまがまが感じはしないから地獄ではなさそう。


 太陽の光だって神々しく差してるからきっと違う。


 ……私、天国に来れたんだ。


 まぁ、そんな悪い事をした覚えもないし、天国行きは妥当かも。


 ……それより、この人は誰だろ?


 私のすぐそばで、なぜか私に向かって片膝を付いて頭を下げた銀髪のイケメンがいる。


 布のシャツに皮のズボンとブーツでかなりラフな格好。


 腰のベルトには綺麗な剣が。


 天使……ではなさそう。


 見たところ翼は無いし、服装も漫画やゲームに出てくる旅の剣士みたい。


 この人は天国でどういう役職の人なんだろ?


 案内人? それとも護衛(?)の人?


 とりあえず話しかけて聞いてみようと思い、失礼のないように立ち上がろうとした。


 すると——


「お手をどうぞ」


 私の動きを察して手を差し伸べてくれた。


 イケメンだからか、凄く様になってる。


「あ、ありがとうございます」


 差し伸べてくれた銀髪イケメンの手を取って立ち上がる。


 そこで超違和感。


(目線、高くない?)


 銀髪イケメンの人は見た感じ身長が一八〇センチくらいある。


 それなのに目線が私と殆んど変わらない。(むしろ私の方が高い?)


 足元が木の根で段差が出来ているから私の立っている位置の方が少し高いけど、一五〇センチの私との身長差を生めるほどの高低差は無い。


 厚底の靴でも履いてるのかな?


 そう思って自分の足元を見てみると――


「うぇ!?」


 足元よりもまず、手前にある二つのデカい|塊(かたまり)が視界に入った。


 というか、デカい塊のせいで足元が見えない。


 な……、


「なんじゃこりゃああああ!!」

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