2.退屈な日常1

「はぁ ……」


 私、琴坂真白ことさましろ、十五歳の花の女子高校生は、七月の暑い夏の日の放課後に、文芸部の部室で椅子に座りながら重い溜息をついていた。


「またぼっちに逆戻りかぁ~~」


 部室でぼっちな私だけど、クラスでも同じようにぼっちだ。


 なかなか友達が出来ない。


 理由は私が人と話すのが苦手なコミュ症だから。


 さらに転勤族というコミュ症には厳し過ぎる環境が追い打ちをかけている。


 今の学校にだって、入学式から二ヶ月後の六月に転校して来た。


 二ヶ月も経ったら、女の子たちはもうグループが出来ちゃってるよお~。


 コミュ症の私は、その中に入っていけないよお~。


 声を掛けてくれたとしても、「え、あ、はい、うん」の四つでしか返せないよぉ~。


「ほげぇ~~」


 今まで繰り返して来た変わらない虚しさに、つい机に上半身を胸からペタンと乗せ、首を横に向けて気の抜けた声を出してしまう。


「私の青春には友達すらいないのか」


 このセリフ、もう何度言ったかわからない。


「つい最近までは、リア充とまではいかなくても、楽しい学園生活を送れそうだったのになぁ……」


 実を言うと、この学校では今までには無かった嬉しい日常があった。


 話す相手のいない休み時間、図書館で一人でラノベを読んでいる私に、文芸部の先輩たちが声を掛けてくださったのだ。


「ねぇ、あなた本が好きなの? よかったら文芸部に入らない?」


 学校で久しぶりに人から声を掛けられて私はびっくりした。


 失礼のないように早く返事をしなきゃと焦った私は思わず、


「ひゃ、ひゃい!!」


 図書館で大きな声を出してしまった。


 めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、今となっては良き思い出です。


 その日以降、文芸部に入った私は先輩たちにめっちゃ可愛がってもらった。


「真白ちゃん、これ美味しよ」


 先輩たちが、それぞれ好きなお菓子を食べさせてくれた。


「これ、スタビの新商品よ」


 スタビの新商品を飲ませてくれた。


 美味しかった。


 一ヶ月で三キロ太った。



 先輩たちに囲まれて送った青春の部活動。


 凄く楽しかったし、一人っ子だったから、お姉ちゃんが出来たみたいで凄く嬉しかった。


 それなのに……まさか先輩たちが全員三年生で、一年生が私一人だったなんて。


 必然的に先輩たちが引退したあと、私が唯一の部員で部長に……。


 これは期日までに部員を集めて五人以上にしないと廃部になるやつでは? と焦ったらそんな事はなかった。


 気の済むまで部長として頑張ってもらっても大丈夫だって、幽霊顧問にお墨付きをもらってしまった。


 辞めたくても辞めにくい状況。


 辞めるなら不可抗力で廃部になった方がよかったよぉ〜。


 ……まぁ、よく考えたら辞める気も辞める理由も無かったんですけどね。


 どうせ他にやる事ないし。

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