第5話 マギナクラス
広い局長室に、俺とマキナの声が良く反響する。驚く俺達とは対照的に、局長は平然としていた。
「コーラクス魔法学園って、あの?」
「君は他のコーラクス魔法学園を知っているのか?」
「いや、知りませんけど……。」
「ちなみに君には教師として潜入してもらう。問題ないな。」
「いや、問題大ありですよ!」
コーラクス魔法学園、アスタルム王国で最も大きい建物であり、世界有数の魔術師を育てる学校。
通う生徒はほとんどが貴族の出身か、有数の魔術師の家系であり、現在でも多くの生徒が卒業後の優秀な魔術師としての生活を保障されており、省庁や王国直属の魔術師となることが多い。
「あの学校には貴族や官僚の子供が多くいる、それに若い芽は早くに摘み取ってしまおうと考える悪い輩が多いらしく、ウチきっての凄腕である、君に潜入調査を依頼したいらしい。」
「いや、俺に任してもらえるのはありがたいんですけど……。」
そう、この話には大問題が一つある。
「俺、魔法ほとんど使えませんけど……。」
そう、俺は大した魔法はほとんど使えない。この世界に来て覚えた魔法も基本的な魔法以外には潜伏や気配の探知など、諜報に使えそうなものくらいしか使えない。実は炎系の魔法が得意で~とか、氷の精霊と契約していて~みたいな、都合のいい展開は一切ない。
そんな俺が魔法学園で教師……?
「お言葉ですが、局長。」
俺が何と言おうか迷っていたところ、マキナが凛とした声で言う。
「彼はほとんど魔法の適正もありません。しかもあの学園は魔法の使えない者に対して非常に排他的です。正直、やめた方がいいかと。」
おお、よくぞ言ってくれた。フォローになってない気はするが、まあおおむね俺と言いたいことは同じだ。
「なるほど、コーラクス卒業生としては反対か。」
「はい、あそこの生徒はプライドの高い奴らばっかりです。この男が教師になっても、3日も経たずに学級崩壊するに決まってます。」
普段より語調が強いマキナ。言葉の節々に学校への恨みが見え隠れしている気がする。なんか嫌な思い出でもあったのか。まあ確かに、こいつプライド高そうだしな……。
「何その目は。」
「いや、お前が卒業生なの、納得できるなーと思って。」
「今の話を聞いてそれはどういう意味かしら……?」
隣から怒りのオーラを感じ、俺は局長に向き直る。
「でも、実際俺には向いてないと思いますこの仕事。マキナの言う通り、俺は基本的な魔法と潜入用の魔法しか使えませんし、今更これ以上魔法も覚えれるとは思いません。」
「まあまあ、話は最後まで聞きたまえ。何、私も君に魔法を教えるのを期待している訳じゃない。」
「局長、何気ひどくないですか。」
ハナから無理だと分かってはいるが、それはそれ、これはこれだ。
「っていうか、魔法学園ですよね。魔法教えずに何するんですか?」
俺の質問に対し、局長はなぜかマキナの方を向く。
「マキナ君、フィールズクラスを知ってるか?」
「ええ、まあ知ってますけど。って、まさか」
「ああ、そのまさかだ。」
「いや確かに、あそこなら確かにシュートでも……。」
「納得してくれたか。」
「ま、まあ……」
なんだか俺の知らないところで話が進んでいく、なんだか嫌な予感もしてきた。
「あの~、ちょっとよろしいですか。」
「何シュート、今大事な話してるんだけど。」
その大事な話は俺の話だろうが。マキナは放っておいて、局長に尋ねる。
「いや、そのフィールズクラスって、何ですか?俺、あんまりその辺詳しくなくて……」
「マキナ君、説明してあげてくれ。」
マキナは少し悩んだかと思うと、分かりましたと答える。
「フィールズクラス、学園ではマギナクラスって呼んでいる人が多かったわ。」
「へえ、マギナクラスか、お前に名前似てるな。お前もそこ出身だったりするのか?」
俺の反応にマキナは、はぁとため息をつく。
「名前は似てるけど、私はノーブルクラス出身、フィールズとは何なら逆よ。」
「逆って?」
「フィールズは、
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