第4話 10分で書け
仕事場でヒマになった時間。わずか10分。10分で1000文字を書かなければならなくなった。
たぶん、あああ、とか、いいい、とか。キンキンキンを連打すると、簡単に、1000文字を達成するだろう。しかし、小説家を目指す小生にそんな甘やかされた現状は許さない。少なくとも、文字として読める程度には10分で、何かを書かなければならない。
要はエッセイ。小説ではない。小生の作品は、小説ではなくて、エッセイなのだ。
近年、焼きそばを3分でつくるのを描写しようという企画があった。プロ志望のアマチュア作家の小生も、焼きそばを3分でつくる描写にチャレンジした。
10分を、3分、3分、3分、1分に分ける。
焼きそば、カップヌードル、やかん、湯沸かし器を用意する。
そして、やかんに水を入れて、湯沸かし器をオンする。4分以内に火をたく。やかんが真っ赤に燃える。いや、これは表現であり、実際に真っ赤に燃えている訳ではないが、やかんが加熱する。100℃をこして沸騰する。約4分。すかさず小生は焼きそばの蓋を開けて、加薬を取り出し、焼きそばにまく。ついでにカップヌードルにも同じことをする。
熱湯のお湯を注ぎ、残り5分。10分の半分が経過する。
3分で小生は小説を書きながら、焼きそばとカップヌードルを待つ。残り500文字。約半分を書けば小説もどきのエッセイの完成だ。
5分間耐え、焼きそばはやわらかめに。カップヌードルはやわらかめに。そして、4分近くの時間がたって、いざ完成。蓋を開けてごみ箱に捨て、焼きそばを混ぜる。
「お兄。焼きそばの汁を捨ててないよ!?」
小生の妹。10歳の妹が話しかけてくる。
「これは時間と描写の都合上、仕方のなかった措置である」
小生は焼きそばの湯を捨てず、そのままソースを流し入れる。見事、湯残り焼きそばの完成である。
残り250文字。時間は1分!
早くも話の続きにオチなるものをつけなければならない。
オチは……オチない。なぜなら、この小説もどきのエッセイは10分で1000文字を書いたものであり、オチを考える時間がまったくなかった。
少なくとも、カップヌードルは妹の分であり、小生は描写力の不足の為、湯残り焼きそばを食い入れることになった。
「妹。この話にオチをつけてくれ!」
「この物語はフィクションであり、お兄に現実の妹もいなければ、まさに湯残り焼きそばを食べるシーンもありません。所属する団体や地名は想像上の者です。以上!」
1000文字終わった。仕事も、約10分で終わり、小生は満足した。
「帰ったら、焼きそばでもカップヌードルでもなくて、カップそばを食べよう……」
妹は空想上の妹でした。まったくオチなくてすみません。これが本当の……
「オチだけで5分オーバーだ。残業は要らない。早く帰れ!」
と怒られた。なので小生はオチなしでパソコンを閉じて、職場をあとにした。オチは明日考えよう。
明日野郎はバカ野郎なのだが……。
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