第17話 Sometime(17)
「恋って。 こんなにせつなかったっけ、」
志藤は煙草の煙をくゆらせながらぼんやりと言った。
「・・あなたには似合わないセリフですけど?」
ゆうこは苦笑いをした。
「ずっと一緒にいたいって思うことがもう恋やねんな、 なんだかもう忘れてた、」
ひなたが浩斗に
友達以上の気持ちを抱き始めていることを感じ
父親としては複雑だったが
そうやってみんな成長していくんだろうなとも思う。
「・・おはよ、」
ひなたは少しだけ勇気をふりしぼってすでに登校していた浩斗の前に行く。
昨夜あんな別れ方をしたので、少しびっくりしたように
「・・おはよ、」
浩斗は同じ言葉を返すことしかできなかった。
別に何を言うってわけでもなく
ひなたは後ろの自分の席にスーッと移動した。
それから
やっぱり二人はよそよそしく
全く口を利かなくなってしまった。
ひなたも自分の気持ちを素直に口にしたい気持ちはあるけれど
なかなか素直になれない。
中間テストが終わると
三社祭だ。
お祭り好きのひなたはもうテストなんかどうでもいいほどワクワクしているのだが
今年は全くときめくことがなかった。
「あら、御神輿いかないの? 担がせてくれるって言ってたわよ、」
祭になるとゆうこは実家に手伝いに行く。
中学生になってから大人の神輿に混ぜてもらえて
大喜びのひなただったのに、実家の茶の間でゴロゴロして漫画を読んでいるだけだった。
「・・なんか。 めんどくさい、」
ここのところいつもの元気もないし。
ゆうこは心配になって小さくため息をついた。
夕方になる友達と出店が出たりするので連れだって出かけるのもいつものことだった。
なんか
めんどくさいけど。
ちひろたちと約束しちゃったしな~
浴衣を着せてもらいながらも非常に乗り気にならなかった。
「はい。 できたよ。 すっごいかわい~~~、」
髪も叔母の優香子にかわいく結ってもらった。
「お義姉さん上手ですねー。 あたしはおだんごにするくらいしかできないから、」
ゆうこはひなたの仕上がりに満足そうだった。
「たくさん高校生たちも来てるから。 変な男の子に声掛けられてもついて行っちゃダメよ。 ホント心配なくらい、ひなたちゃんカワイイから、」
鏡越しにひなたを覗き込んで優香子は言った。
カワイイ・・かな?
ひたは鏡に映る自分の姿をぼんやりと見つめた。
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