第14話 Sometime(14)

「んじゃあ。 また明日な、」


浩斗はひなたの家の前まで送ってきてくれた。



「・・・」



笑顔の彼とうらはらに



うつむいたあと



「・・今日。 なんで二人で行こうって・・言ったの、」



ひなたはさっきからずっと気になっていたことを口にした。



「え?」



「なんで? アメリカに行っちゃうこと。 言いたかったの?」



言葉を発したらもう止まらなくなってしまった。



「えっ。 まあ、それも・・あったけど、」



浩斗は困ったように小さな声でごにょごにょと言うだけで



はっきりと答えない。




「なんなの? ほんっとイキナリなんだから。 いきなりそんなこと言われて。 ひ、浩斗なんか英語が2のくせにNYなんか行ったって英語わかんなくってすぐ帰りたくなっちゃうんだから!! ぜんっぜんアメリカとか似合わないし!!」



もう理不尽でも何か言ってやらないと気が済まないほど腹立たしかった。



「・・行っちゃえばいいじゃん、どこでも!!」



ひなたは思いっきりそう言い放ってそのまま家の門を開けて入っていってしまった。



浩斗は茫然としたようにひなたの後姿を見送るだけだった。




「あ、おかえり・・」



ゆうこはひなたが帰って来たのを見て、気にしつつ迎えたが




「ただいま、」



機嫌悪そうにそうひとこと言ってすぐに二階に上がってしまった。



「なに? 帰ってきたん?」



この日は日曜出勤で、おそらく仕事にもあまり身が入らず夕方には戻ってきていた志藤がリビングから顔を出した。



「ええ・・」



ゆうこはひなたの様子が心配だった。



「なに? なんかあったんか?」



何だかただごとではないようなひなたの様子を察し、志藤はすっかり慌てていた。



ひょっとして



ゆうこは何となく予感がした。



「あ・・おかえり。 あのね、おねえちゃん・・」



部屋に戻って来たひなたにななみは昼間のことを話そうかと思っていたのだが



ひなたは何も言わずに自分の机の椅子に座り込み、そのままつっぷしてしまった。



「おねえちゃん・・」



いつも明るくて落ち込んでる姿さえも見たことがないこの姉の姿にななみは驚いた。



とても声がかけられなかった。



浩斗くん



おねえちゃんに話したのかな・・



ななみは何だか自分が泣きたくなってきた。

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