第12話 Sometime(12)
「おれ。 アメリカに行くかもしんない、」
浩斗の口から出た言葉にひなたは息をのんでしまった。
「アメリカ・・?」
「うん。 NYだって。 その人がさあ、銀行マンで。 今度NY勤務になるんだって。」
心臓がバクバクいいはじめた。
え・・
NYって・・なに?
「ひ・・浩斗も、いくの?」
「姉ちゃんもNYの大学に留学したらどうかって話になっちゃって。 その人がそういう手配もしてくれるって言うんだけど。 おれはやっぱここにいたいって思うんだけど、家族みんなで行こうって母ちゃんがいうから、」
一瞬
鳥肌が立ってしまった。
浩斗が?
アメリカに・・???
「うちの母もね。 家族みんなで行った方がいいって言ってくれてね。 せっかく一緒になるのにバラバラで暮らすのはよくないって。 麻奈はもともと留学したいって言ってたから喜んでるけど、浩斗は、」
浩斗の母はゆうこに話をしながらまた落ち込んできたようだった。
「NYに、」
さすがにゆうこも驚いた。
「ここを離れたくないって言うのよ。 その気持ちもわかるけど・・でもやっぱりまだ中学生だもん。 一緒に暮らした方がいいと思うし。 あたしもNYに行くために今の会社を辞めさせてもらうことにしたし、」
浩斗がひなたと二人ででかけたい
と言ったわけが
ぼんやりだけどわかった気がした。
一方、ひなたはもうショックでそのあと口がきけなくなってしまった。
「行きたくないけど。 でも・・結局おれなんてまだ中学生だし。 親の生活についてくだけなんかなって思う。」
浩斗はもうここを離れる覚悟をしているようだった。
浩斗の母がやっと幸せになって
浩斗にも新しいお父さんができて
いいことばかりなのに
でも。
「もう、行ったら帰ってこないの・・?」
ひなたは呆然として言った。
「わかんない。 高校卒業したら自由にしていいって母ちゃんは言うけど、」
仕事をしているお母さんを
浩斗もおねえちゃんも頑張って支えてきたことは
わかってる。
家族が離れ離れで暮らすなんて
やっぱりさびしい以外の何物でもない。
「みんなと別れるのは、さびしい。 まだ誰にも言えなくて。」
あたしだって
信じられないよ
ひなたはあんなに元気だったのに
全てがどこかに吸い込まれてしまったようで黙り込んでしまった。
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