第9話 sometime(9)

そうこうしているうちに



日曜日になってしまった。



寝坊をして慌てて支度をするひなたに




「・・水族館、いくの?」



後ろからななみが遠慮がちに声を掛けて来て



どきんとした。



「うん・・あたしもスカイツリーの水族館は行ったことなかったから。 どんなかな~~って、」



わざと



浩斗のことは避けてあたかも水族館にしか興味がないように言った。



でも



支度をするフリをしてななみの顔は見なかった。




「・・いっぱい。 きれいな魚がいるんだろうね、」



ななみは静かに言った。



「おみやげ。 買ってくるから。 ママがちょっとお小遣いくれたから・・」



胸が痛くて



申し訳ないような





「え、それで行くの?」



ゆうこはリビングに降りてきたひなたに言った。



「え?なんで?」



「なんでって・・」



ひなたの恰好は普通のTシャツにジーンズという



まるでいつもの休日の服装だった。



「もうちょっと。 おしゃれしていったら?」



いちおうデートだっていうのに



そういうことにも興味を示さないひなたに少し呆れてしまった。



「え~~? 時間ないよ~。」



「せめて・・ホラ、このまえおばあちゃんにかわいいチュニック買ってもらったじゃない。 それにしなさいよ、」



「あ~~~、もう!」



ひなたは慌てて階段をまた駆け上がった。



「かわいくしてったらよけいに浩斗が妙な気持ちになったらどーすんねん、」



この日、休日出勤の志藤はネクタイを締めながら



恨めしそうに言った。



「女の子として、もっと気を遣わなくちゃ。 そういう問題じゃないでしょ、」



まだ気持ちよく送り出してやれそうもない志藤に



全くしつこいと思いながらゆうこは呆れた。






「なんだ。 浩斗も普通じゃない、」



駅で待っていた浩斗の姿を見たひなたは



彼もいつもとなんらかわりない恰好だったので、着替えてきた自分がアホらしくなった。




「え? なに?」



「別に~~。 んじゃ、行こう。」



こうして会ってしまえば



いつものように軽口を叩いて笑いあったり



それはそれで楽しかったりするのであった。


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