第1373話 *マルゼ* 味方に

「それなら酒を売るといいんじゃないか」


 お金を回収する方法をライガに尋ねたらそう返された。


「お酒? 売られるの?」


「売れるし、飲んだら終わり。他に売られることもない。コラウスでも金稼ぎにやっているよ」


 そうなんだ。確かに大人は楽しそうに飲んでいるよな。


 どんなものかとギルド内で売ってみたらすぐに売り切れてしまった。どんだけ~!?


「マルゼ。また売ってくれ」


「頼むぞ」


「マルゼ。もっと出すから仕入れてくれ」


 なんかギルドマスターまでしれっと要求してきた。


 ギルドマスターなんてなかなか会わないのに、酒のためにおれに会いにきちゃったよ。


「仲間のところに取りにいってきます」 

 

 そう言ったらすぐに許しが出た。だからどんだけ~!!


 ライガに連絡したら用意してくれるとのこと。ビンブーを運ぶ馬車に乗って山の広場へと向かった。


「マルゼ。おれらにも葡萄酒を売ってくれないか?」


 御者の人に尋ねられた。


「別に構いませんが、前に言ったとおり、セフティーブレットの品は魔法がかかっていて、十日触らないと消えてしまいますよ」


 おれたちが使っているものは高品質だ。欲しいと思うのは当然。欲しがる人はいた。だからおれたちの品には魔法がかかっていることを説明して断っていたのだ。


「美味い酒なら十日どころか一日で飲んじまうよ。あの味を知ったら不味くてうっすい酒なんて飲んでらんないよ」


 まあ、だから酒を売れってことなんだけど、そんなに味が違うものなんだ。


「十日で消えることがわかって、納得してもらえるなら構いませんよ」


「頼む」


 ってことなので、望む人らに売っていたら他の商会にもお願いされてしまった。


「さすがにそんなにないですよ。海を渡るのも大変ですからね。まあ、ギルドマスターがきたらもっと運んできてくれると思いますよ」


 さすがに報酬のすべてをお酒に使うわけにはいかない。荷車一台分で終了しておいた。


 それでも結構稼げた。銅貨にして約四百枚。マジックバッグがなければ大変なことになっていたな。


「ルウ、マル。ちょっと付き合って。買い物するから」


 清書の仕事が終わり、買い物に付き合ってもらうとする。


「買い物? 珍しいね」


「うん。小麦を買いたくてね」


「小麦? パンなら焼きたてを買えばいいじゃない」


 まあ、一般の人は小麦を買ったりはしない。一から作ると大変だからであり、焼き釜を持っているところも少ないからだ。


「巨人がパンを食べたいからってお願いされたんだ」


 あちらの大陸では小麦が不足していて、運んでくることはできない。食べたいと思ったらこちらで手に入れるしかないのだ。


「あたしたちだけで買えるの?」


「そこは大丈夫。タルジさんに紹介状を書いてもらったから」


 麦を運ぶ仕事も請け負っているので話を通してもらったのだ。


 麦類は領主が税として取り立てるのはここでも同じだが、六割は残すそうだ。あまり取り立てても保管しておく倉がないんだとか。なら、商会に買わせて捌かせたり保管させたりのほうが安上がりなんだそうだ。


「去年は豊作だったからって理由もあって売ってくれるそうだよ」


 なんか麦を保管するのも人手がかかり、手を抜くと腐ったり虫に食われたりするんだってさ。ただ倉に入れておくだけじゃなかったんだね。


 タルジさんに紹介された商会は、まだ店を開いており、紹介状を出したらすぐに偉い人が出てきてくれた。


「タルジから聞いているよ。別の大陸からきたんだってな」


「はい。ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのマルゼです。今は冒険者ギルドでお世話になっています」


「まだ見習いみたいな年齢なのにしっかりしているな」


「ギルドマスターに教えてもらいました。お前は交渉役が向いているからと」


 おれはねーちゃんのように戦えない。だが、こうして交渉したりサポート役として向いていると、いろいろ教えてくれたのだ。


「確かに、若いのに堂々としているし、礼儀もなっているな。ギルドマスターは見る目があるのがよくわかるよ」


「はい。おれの目標する人です」 

 

 おじちゃんがいけないところにいき、おじちゃんのように役目を果たす。それがおれの目指すところだ。


「そのギルドマスターに会ってみたいものだな」


「商人からは絶大の信頼を得ていますが、偉い人からは恐れられてますね。公爵様からバケモノと言われているって聞きました」


 おじちゃんを見ていたらわからないではない。人の懐に入るのが本当に上手いのだ。偉い人からしたらいつ乗っ取られるかわかったものじゃない。怖いって思うのも仕方がないよ。


「ギルドマスターはいずれここにきます。そのときはよろしくお願いします。きっといい商売ができると思いますので。これはお近づきの印にお納めください」


 普通の鞄から薬を五つ取り出した。きっとタルジさんから聞いているはずだ。商人なら調べたりするはずだから。


「そのギルドマスターも恐ろしいが、お前もまた末恐ろしいものだ」


 うん。この人は、おじちゃんの周りにいる商人と同じだ。なら、味方にしておこう。おじちゃんがここにきたとき、すぐに動けるようにしておこう。

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