第1374話 *雷牙* アイスソード
次々と集まるビンブー。とんでもない量である。
それでも巨人の胃袋は満たされない。ゴブリンのエサにする計画は破綻し、運ばれてきては要塞に運ばれている。
「さすがに飽きたな」
ビンブーは美味い。でも、それ以上の美味いものを知った今では五匹も食えば飽きてしまった。巨人たちはよく飽きないものだ。
「ライガ。
骸とは山黒のことだ。こちらでは骸と呼ばれているようだ。
巨人でも山黒を倒すのは大変だが、アサルトライフルを持たれたらさすがの山黒も堪ったもんじゃない。弾も巨人サイズになると対物ライフルの弾より大きくなる。グロゴールくらいにならないと防ぐことはできないだろうよ……。
「お疲れ様。細切れにしてビンブーのエサにしようか」
毛皮や骨なんかは材料になるけど、肉はかなり手間をかけて処理しないと食えたものじゃない。あんなのを食えるのはゴブリンかビンブーくらいだろうよ。
「おう。これは魔石な」
巨人の指先くらいある魔石を渡された。
なんかサイズがバグるよな。小さいと思ったら、スイカサイズくらいあるんだかさ。
「ありがとう。ラコ。続きをお願いね」
「はい、わかりました」
連れてきたドワーフの女性にビンブーの処理を任せてホームに入った。
「タカト。山黒の魔石が手に入ったよ。ビンブーの処理はもうちょっとかかりそうかな」
処理したビンブーはホームに入れられるので、館とマガルスク王国に運んでいるのだ。
「ご苦労さんな」
なにかプランデットで見ているタカト。あまりよくない声音だ。
「どうかしたの?」
「メビが大魔境でゴブリンの王国を発見したようだ。そこでは人間がエサになり、ロウオって土虫がゴブリンを増やしている元凶のようだ」
「ロウオ? 土虫?」
これだと、メビの情報をおれのプランデットに送ってもらった。
「あ、これね。ビンブーに似たヤツ。よく死骸に群がっていたよ。こっちはまったく美味しくなかったっけ」
羽があるかないかの違いなのに、こいつはまったく美味くないときたもんだ。土の味しかしなかったよ。
「……こんなのまで食ってたのか、お前は……」
「まーね。冬になるとビンブーがいなくなるから仕方がなくさ」
「ってことは、ロウオは一年中いて、ビンブーは冬になるといなくなるんだ」
「いなくなるっていうか、ビンブーは土の中で冬眠するんだよ。暖かくなると土の中で産んだ卵を孵化させて出てくる。親をエサにしているっぽいね」
孵化したばかりのビンブーもプチプチして美味かったっけ。まあ、今は食えと言われても嫌だけどさ。
「……そっか……」
考えに入るタカト。なんか重要な情報っぽかったみたいだ。
その辺はタカトにお任せだ。おれには想像もつかないんだからな。
「魔石はボックスロッカーに入れておくね」
おれたちに魔石は必要ないので、魔王と戦うヤマザキに渡すとする。
「あ、そうだ。ビンブーって、ヤマザキがいる王国で繁殖するってマルゼが言ってたよ」
「山崎さんのいるところで?」
「うん。なんか千年王国とか呼ばれているみたい。最古の王国って伝説があるようだよ」
ボックスロッカーを開けたらヒートソード──ではないな。なんだ?
「タカト。なんかヒートソードっぽいのが何本も入っているよ」
「お、できたのか。それは、アイスソードだよ」
アイスソード? ヒートソードの親戚か?
「ライオットさんから借りたアイスソードをコピーしてもらったんだよ」
確か、もう一人の駆除員の旦那さんだっけか? そう言えば、ヒートソードの冷たい版とか言ってたっけ。
「どうするの、こんなに?」
冷たい剣なんてなにに使うんだ?
「冷凍庫を作りたかったんだよ。館でも氷とか求められて、悩んでいたところにアイスソードが現れてくれたってわけさ」
なんともタカトらしい発想だよな。武器として使わないところが……。
「やっぱりアイスソードのコピーには相当の魔力が必要になるか」
ボックスロッカーに入っていたのは十一本。一本はライオットって人から借りたものようだ。
「雷牙、使うか?」
「一応、持っておくよ。どんな使い方ができるか試したいから」
おれはタカトと違って武器としてどう使えるかのほうが気になる。斬ったら凍っちゃうのか?
「マリルにも一本渡しておいてくれ」
「了解。あいつらな喜ぶよ」
戦闘狂なところがある。攻め手が増えることは対処法が増えるってこと。マリルのような性格にはアイスソードの存在は嬉しいだろうよ。
「順調のようだな」
「まあ、毎日毎日ビンブーをシメてばかりだけどね」
「ラザニア村でも好評だよ。オレは絶対に口にしたくないがな」
タカトは美味しいのしか食べてきてない。よほどのものじゃないと口にしないだろうよ。
「飽きないよね、巨人って。要塞に届けてもすぐなくなるみたいだよ」
「飼いならされるといいんだがな」
「そうだね。ビンブー、カロリーバー食べないし」
カロリーバーを食ってくれたらいいんだが、まったく見向きもしない。死肉や木の皮を食べるだけ。難しい虫だよ。
「まあ、何匹か生きたままマガルスク王国に運ぶとしよう。バデット対策に使いたいからな」
あれも食うんだ。まったく、タカトはそういうこと考えたら誰にも負けないんだから。
「マイセンズはまだ魔力が溜まらないの?」
「まだまだらしい。でも、さすがに一月したら止めるよ。そろそろそっちの大陸にいかないとならんからな」
「マルゼ、楽しみにしてたよ」
「オレもだよ。マルゼたちの成長がどれほどのものか知りたいからな」
日に日に父親の顔になっていくな、タカトは。
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