第1139話 トライトン
一旦ホームに入り、ピックアップトラックが載ってそうな雑誌を買って調べてみた。
「三菱トライトンっていうんだ。知らんかったわ」
まあ、二年の歳月が過ぎている。新車が出ていても不思議じゃないか。
「ん? トライトンってディーゼルなんだ。軽油も買わんといかんな」
軽油はトラクターにも使っているが、使うのはミサロだけなので、買ってもすぐに外に出される。
「出すの面倒だし、軽油はエクセリアさんのほうで買ってもらうか。エクセリアさん、車はガレージに入れたいタイプみたいだからな」
あっちのセフティーホームなら給油できる部屋とか拡張できそうだし。
「約五百万円か。まあ、問題ないな」
三十パーオフシールが丸々残っている。パイオニアをそのまま買うようなものだ。
オプションもそんなにつける必要もない。色も白でいいそうだ。
タブレットでポチり、中を確認する。最新すぎてなにがなんだかわからんな。
一応、説明書は入っているので、主に使うものだけを読んで覚えた。
「性能はピカ一でも異世界で使えそうな機能がないよな。プランデットと同期できればいいのに」
人工衛星は上がってんだから受信できそうなもんなんだがな。ガーゲーで改造できないものかね?
ハイラックス、ミサロに出してもらって改造してもらおうかな?
「まあ、こんなもんか」
こんなに機能が多くて覚えられるヤツいるのかね? 車好きでも覚えられなくなってきてるよ。これって歳だからか?
エンジンをかけて外に出た。
「お待たせしました。覚えるのに手間取ってしまいました」
「構わないわ。やっぱりいい姿ね」
姿と言っちゃうところかなり気に入っているようだ。
「基本はハイラックスと変わりはありませんが、エンジンが違うので燃料も違ってきますから」
あれこれ言わず、まずはエクセリアさんに運転してもらった。
ハイラックスのときもそうだったけど、エクセリアさんは覚えるのが早い。運転もさらに上手くなっている。カインゼルさんとタメ張れるんじゃないか?
「軽油はセフティーホームで買ってください。慣れるまでガソリンは置かないほうがいいですよ。ディーゼルにガソリンを容れたら大変ですからね」
元の世界でも容れ間違いはある。慣れるまではガソリンは置かないほうがいいだろうよ。
「わかったわ。ガレージをもっと考えないとダメね」
あちらのセフティーホーム、かなりとんでもないことになってそうだ。こっちも最初の広さからしたらとんでもない広さになってるしな。
「ハイラックスはこちらで使いますね」
「残念だけど、仕方がないわね」
「ルースミルガンが入る広さも確保しててください。ガレージは結構広くないと移動が大変になりますからね」
「ソレガシに言っておくわ」
ではと、エクセリアさんとは拠点の前で別れた。次は迷子にならずミリエルのところに向かってください。
オレのところよりミリエルのほうがゴブリンがいるはず。そちらで稼いでください。
トライトンが消えたら拠点に入ると、さらに人が増えていた。いや、他に移ったらええやん。
「もうバデットはいないんだから自分たちの家に戻ったらどうだ?」
片付けもあるだろうに、ここに集まってていいのか?
「まだ皆が不安にしておりますので、落ち着くまで置いてください」
「オレらは二、三日しかいないからな。その間に自分たちの生活を整えるようにしろ。マベルク。城にいくぞ」
倉庫が生きているかを調べるのが本来の目的。さっさと片付けるとしよう。
「あいよ」
もうバデットも魔物もいないので戦闘強化服を脱いで、X95装備に着替えた。
領都と言ってもそこまで広い街でもない。城も館より大きいくらいのもの。城壁も人が越えられないていどのもの。すぐに城門までやってきた。
「派手に破られてんな」
「バデットが大量に襲ってきたそうだ」
「よく伯爵たちは生きてたな?」
「城の地下から霊廟に繋がっているそうだ。そこから逃げ出したって言ってたよ」
へー。そうだったのか。なんで生き残れたか不思議だったが、そんな理由があったからなんだな。
「死体はないか」
バデットにされたのか、白骨死体もない。それとも草木の下に隠れているのかな?
「かなり荒らされてんな」
木材のところは破壊され、腐りかけている。
「反応はないが、念のため城中を探索するぞ」
休止状態になっているかもしれない。完全に安全を確保してから倉庫を確認するとしよう。
「マベルク。暗視に切り替えろ。オレが魔力と動体を受け持つから」
「了解」
城は昼でも暗い。バデットが隠れているのに適しすぎるぜ。
まずは玄関から入り、上を目指す。
階段が朽ちていて上がれないが、登れないわけじゃない。がんばって登り、伯爵たちが住んでいた階に到着した。
「ここにもバデットがきたみたいだな。となると、隠し通路があるってことか」
部屋は荒らされ、雨風が入ってきてカビたりもしている。こりゃ、掃除するの大変そうだ。
すべての部屋を探るが、バデットはなし。使えそうなものもない。ランティアックで必要なものを持ってこないと生活できんな。
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