第1136話 ドラグニウス(竜と人の合の子)

 子供たちが綺麗になって戻ってきたのでシチューを食わせてやった。


 カロリーバーを食べさせたようだが、やはり温かい料理には勝てない。凄い勢いでかっこんでいるよ。


 腹が膨れたら眠ってしまう子供たち。疲労がかなり溜まっていたんだろうな。


「マベルク。今のうちに地下霊廟を見てきてくれ。オレがいくより信用されるだろうからな」


 少なくとも東洋人顔のオレより西洋人顔のほうが警戒はされんだろうよ。気にしないようにはしているが、初めてオレを見るヤツは怪訝な顔をしているからな。


「わかった。ここに連れてくるか?」


「無理に連れてくることはない。ゴブリンやバデットは去ったこと、伯爵が生きていたことくらいは伝えてくれ。今後のことは伯爵次第だってな」


 こちらまで面倒は見られない。復興は男爵と相談して決めてくれだ。


「了ー解。んじゃ、いってくる」


「気をつけろよ」


 マベルクが出ていったら子供たちが使った湯船を掃除して水を張っておく。


「日本の男はマメだな。ソレガシもよく風呂を掃除していたよ」


 山崎さん、風呂掃除とかしてんだ。


「オレは一人暮らしが長かったですからね、掃除くらいはしてましたよ」


 食事はできあいのものが多かったがな。


「そちらは上手く生活できているんですか? 結構な数を仲間にしているようですが」


 たくさん仲間にできてもセフティーホームに入れるのは五人だけのはず。どう決めてんだ?


「女神が城に専用扉を作ってくれたから居残り組と行動組に分けたわ。わたしはあなたとの接触役として自由に出入りできるようにしているの」


「そんなことやっていたんですね。こちらもそうして欲しかったです」


 シエイラの他にも入れることができたらいろいろ任せられるのによ。いや、そんなに入られても皆が嫌がるか? オレたちのプライベート空間だしな。


「エクセリアさんは、いつまでこっちにいられるんです? エクセリアさんがいつまでも抜けていたら大変では?」


「別にそうでもない。獣人の娘とドラグニウスの娘が両脇を支えているからね」


「ドラグニウス?」


 また新たな種族か?


「その昔、邪教徒が異世界より召喚されたとされる竜と人の合の子みたいな種族よ。極少数だから知る者もいないわ」


「異世界から召喚とかできるんですね。女神とか邪魔しそうなもですのに」


「抜けた女神なんでしょう」


 物凄く納得できる理由に黙ってしまった。


「とにかく、わたしはこちらにいるわ。ボックスロッカーだけでは荷物を送るのが間に合わないからね」


 まあ、こちらとしても食料を運び出してくれるんだからいてくれると助かるってものだ。


「なら、車の運転を覚えますか? 車まで入れるのなら出し入れも簡単ですし」


 車を覚えたらフォークリフトも覚えてもらったらさらに出し入れが楽になるだろうよ。


「それもそうね。いちいち抱えて入るのも面倒だしね」


 ってことで、ハイラックスの運転を教えることにする。


 瞬間移動できる人だから車はどうなんだ? と思ったらそうでもなかった。


「自分で運転してみると思ったより楽しいわね」


 思いの外、運転を気に入ったようだ。


「気に入ったのならそのハイラックスを譲りますよ。ガソリンはそちらで買ってもらわないとなりませんが」


「ありがとう。その分の食料は渡すわ。ソレガシにももらいすぎだって言われているからね」


「それは助かります。小麦にしていただけると助かります」


「わかったわ。そう伝えておくわ。ヒートソードも明日には十本はできあがるそうよ」


「もうですか?」


 昨日渡したばかりなのに。


「魔石があれば部屋を拡張させるのはすぐだからね」


 こちらよりできがよそそうだ。羨ましい。


「もう少し走ってくるわ」


「そろそろガソリンが切れる頃だから容れたほうがいいですよ」


 ホームからガソリンが入ったドラム缶を運んできて給油の仕方を教えた。


「ちなみにですけど、ハイラックスごと瞬間移動ってできるものなんですか? 橋がないところだといちいちホームに入れないとならなくなりますよ」


「できるんじゃないかしら? 十人くらい纏めて瞬間移動はしているから」


 それは便利だな。


「空間を範囲して、ってことですか?」


「そうね。咄嗟になるとその辺が甘くなってしまうけど」


「転移とは違うんですかね? 魔王軍は転移魔法陣で別大陸からきたみたいなんですよ」


「うーん。わたしは転移魔法陣に関しては素人だからなんとも言えないけど、別物だと思うわ。そもそも転移魔法陣は伝説扱いされたもの。エウロンの者に訊いたほうがいいと思うわ」


 伝説なんだ、転移魔法陣って。


 あれは魔力を溜めたら自動的に転移できるものだった。随分と簡略化されたものだな~と思ってたら、かなり高度なものだったらしい。


「この世界はなにかとメチャクチャですよね」


「女神が女神だからね。仕方がないわ」


「まったくそのとおりでなにも言えませんね」


 この世界、それで片付けられるんだから堪ったもんじゃないよな。そこで生きる生命体はさらに堪ったもんじゃないよ。ハァ~。

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