第1135話 地下霊廟

「少し早いが昼にするか」


 酒が抜けたら腹が減ってきたよ。戦闘強化服は生命維持装置もついている。アルーコルも分解して体調をよくしてくれたんだろう。


「なにか食いたいものはあるか?」


「んー。肉」


「若くて羨ましいよ」


 三十過ぎてからは反射神経のように肉が食いたいと出てこなくなったよ。まあ、だからって肉が食えなくなったわけではありません。体調がいいならステーキは余裕で食えますから。


 ホームからビフテキがあったので、ビフテキサンドにして持っていってやった。


「よく噛んで食えよ」


「お前はおれの母親か」


 だったらよく噛んで食え。胃に負担がかかるだろうに。


「食ったら弾の補給と手入れをしておけ。オレは周辺を探ってくるから」


 そこまでの街ではないが、一応、オートマップにマッピングさせておこう。この先どうなるかわからんしな。


「了解」


 タボール7をつかんて外に出た。


 動体反応はまだ十五以上ある。ん? なんか強い魔力をセンサーが捉えたぞ。なんだ?


「……これは、請負員の反応だな。誰だ?」


 ここまで強いとわかりそうなもんなんだが、なぜかよくわからない。なんでだ?


 その魔力のところに向かったらピンク髪のエルフ、エクセリアさんがいた。


「エクセリアさん?!」


「やはりタカトの魔力だったのね。前に感じた強さと違うからなんだと思ったわ」


 山崎某さんの仲間でピンク髪のエルフ。最近、名前が出てこなかったから存在を忘れていたよ。


「どうしてここに?」


「ゴブリンを探して歩いていたら道に迷ってしまったの」


 いやあなた、瞬間移動とかできましたよね? なぜ迷う? 意味わからんわ!


「稼げましたか?」


「そこそこね。今はどうなっているのかしら? ここ五日、ゴブリンを見てないのよね」


「魔王軍の将は倒しました。今は残敵掃討ですね。詳しい話は安全なところでやりましょうか」


 マベルクのところに向かった。


 弾を補給していたマベルクにエクセリアさんを説明し、最近の状況をエクセリアさんに話した。


「……大事なときに離れていたのね……」


「まあ、そこそこ稼げたのならいいでしょう。魔石もかなりの数を集めたし、セフティーホームはさらに充実したのでは?」


 ボックスロッカーにはちょくちょく魔石は入れていた。こちらより拡張されたんじゃないか?


「ええ。わたしは夜にしか入らないから詳しくはしらないけど、玄関はかなり広くなっていたわね」


「それならルースミルガンを送りましょうか? 空を飛ぶ乗り物があると便利でしょう」


「相談してみるわ。そちらはなにか欲しいものはある? 作物や肉は結構入っていたわ」


「食料は大丈夫なのでヒートソードを生産してもらっていいですか? 最近、当たらなくて困ってたんです」


 武器としてより風呂を沸かす道具としての需要が高いのだ。


「それはいいわね。こちらもそれが欲しかったのよね。ソレガシに言っておくわ」


 今持っているヒートソードをエクセリアさんに渡した。


「すぐに話してみるわ」


 少し離れてセフティーホームに入った。


「この世にはあんな派手な髪をした種族もいるんだな」


「そうだな。エルフでもあの髪は珍しいって言ってたよ」


 ピンクって、どんな色素してたら出せるんだろうな? ファンタジー理論が働いたんだろうか?


「で、どうするんだ? ここで待つのか?」


「うーん。そうだな。いつ出てくるかわからんし、ハイラックスをここに持ってくるか」


 せっかくだし、ここを拠点にするか。建物自体はそこまで朽ちてないし、中庭もあるっぽい。トイレと風呂を置けるだろう。


「わかった。おれが持ってくるよ」


「気をつけてな」


 マベルクが取りにいってくれたのでトイレと風呂を設置する。


 すべてが終わった頃、エンジン音がした。


 着いたのかと外に出ると、荷台に子供が四人乗っていた。どーゆーこと?


「領都で生き残りのようだ」


 十歳前後の子供たちで、隠れながらこの三年を生き抜いていたそうだ。


「お前たちだけか? 大人は?」


「地下霊廟に隠れている。おれたちは通風孔を通って地上に出ている」


 地下霊廟? コラウスにもなんかそんなものがあったが、ここでは地下に埋葬するのか? 待てよ。思えば墓地とか見た記憶がないな。そういう風習だったの?


「逞しいものだ。マベルク、場所はわかるか?」


「いったことはないが、領都の北と西にあるとは聞いたことがある」


 二ヶ所あるってことか。そうなると百人近くいても不思議ではないな。本当によく生きてこれたものだ。


「カロリーバーは食わせたが、温かいものでも食わせてくれ」


「お前たち。その前に体を洗え。ちょうど中庭にお湯を張ったから。マベルク、面倒見てやれ。オレはシチューを作るから」


 全員男だし、風呂で洗ってやれ。臭くてたまらん。ちなみに予備のヒートソードを使いました。


「わかった。お前ら、食事ができるまで体を洗うぞ」


 意外と、と言ったら悪いが、マベルクはなかなか面倒見はいい。仲間たちをなにかと気遣っていたからな。


 カセットコンロを二つ持ってきてシチューを作るとする。


 適当に切った野菜や肉を入れて煮込んでいると、エクセリアさんが出てきた。


「ちょっといないない間にどういうなっているの?」


 かくかくしかじかと説明する。


「こちらでもよくあったものよ。滅ぼされた街に生き残りがいたなんてね」


 よくあることなんだ。強かなのは人類の特性か?

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