第1129話 再会

 朝になり、朝食をいただいたら外に出た。


「雨かい」


 数日前から暖かくなったな~と思っていたが、雨が降るとは想像だにしなかった。パイオニアじゃなくハイラックスにするか。


 人は金があると気が大きくなる。なんの躊躇いもなくハイラックスを買ってしまった。


「いかんな~。もっと考えて買わないと」


 と言いつつ新車に乗るのはウキウキするもの。すぐ泥だらけになるのが悲しいところだがよ。


 ガソリンは入った状態なのですぐに出発。泥を跳ね除けながら進んでいると、マンダリンが一機、現れた。


 雨対策なんだろう。戦闘強化服を着ているよ。


 プランデットをかけて現れた者に通信を繋いだ。


「マスターでしたか。見慣れぬハイラックスだったもので」


 ハイラックスの違い、把握してたんだ。地味にスゲーな。似たようなものなのに。


「雨なのにご苦労さんな。こちらは生き残りの村に向かっているところだ」


「応援は必要ですか?」


「今のところ大丈夫だ。周辺にゴブリンがいるからカインゼルさんに駆除をお願いした。応援するまでもないが、稼ぎたいのなら一緒に参加するといいぞ」


「了解。アリサと相談してみます」


「気をつけてな」


 サムズアップして去っていった。


 ミルズガンからかなり離れているのにここまで遠出するとは。かなりゴブリンの数が減っているんだろう。いないならないないで困った害獣だよ。


「別の大陸に出稼ぎにいってもいいのかもな」


 少しの間いなければゴブリンはすぐに増えるだろうしな。


「でもその前にプロプナスや竜人のことも調べなくちゃいかんよな~」


 いなくなってくれたことはありがたいが、なにか別の目的があって消えたとしたらさらに力をつけているかもしれない。ロンレアや都市国家がまた襲われたら堪ったもんじゃないよ。


 そんなことを考えていたらマベルクたちに追いついた。


「寒いだろう。一休みしろ」


 パラソルを立ててやり、温めた牛乳にラム酒を入れたものを出してやった。


「腹が温まったらこれを食え」


 すぐ食べられるようハンバーガーを出してやる。


「たくさんあるから落ち着いて食え。胃がびっくりするぞ」


 牛乳だけを温めてやり、皆に渡した。


 皆が落ち着いたら馬にカロリーバーを食わせてやり、薬を打ち込んだ。もう少しだ。がんばってくれな。


「また通るから無理するなよ」


「なにからなにまですまない」


「感謝はマガルスク王国を復興で返してもらうさ。じゃあ」


 ハイラックスに乗り込み、発車させた。


 しばらくすると雨が上がり、太陽が出てきた。なんか春がくるって感じっぽいな。


 何事もなく村に到着。昨日の殺伐とした空気はなくなっており、穏やかな空気が満ちていた。


 ……食えることがなにより大事ってことがよくわかるな……。


 村長の家に着くと、伯爵がもう外に出ていた。気が早いな~。


「お待たせしました。すぐに出発しますか?」


「ああ。わたしの他に何人連れていけるのだ?」


「狭くても構わないならあと四人。荷台でも構わないのならさらに四人ですね」


 荷台にマットを敷けば馬車よりは乗り心地はいいだろうよ。


「では、五人で頼む。荷物は積めるか?」


「荷物は別に運びますよ。それですか?」


 玄関の前にかなりの量が積まれている。ランティアックに住むつもりか?


「ああ。頼む」


 まあ、伯爵ともなれば必要なものがあるんだろうと、リヤカーを持ってきて積んでもらい、ホームに運び込んだ。


「じゃあ、兵士の二人は荷台に。見張りを頼みます」


 壮年の兵士がいたのて見張りをお願いし、他は中に乗ってもらった。


 シートベルトを教え、しっかり締めてもらったら発車。おおって驚きを聞きながらゆっくり運転する。


「これは魔法か?」


「正しくは違いますが、似たようなものですね。ゴブリン千匹も駆除したら帰るものですね」


 もう隠す意味もないのでオレが異世界から連れてこられ、ゴブリン駆除を強要されていることを語った。


 他にもマガルスク王国の現状を語っていたらマベルクたちと遭遇した。


「ハクラクカのために動いてくれた者たちに声をかけてください。これからああいう者がマガルスク王国を築いていくのですから」


「ああ。あの者らには感謝しかない。わたしの声でよいのならいくらでもかけようではないか」


 ちゃんと民のほうを向いて政治をしていたんだな。どこかの政治かに聞かせてやりたいよ。


 ハクラクカを停め、休憩とする。


 伯爵がマベルクたちに声をかけている間にお茶の用意をする。男爵は紅茶を出すだろうから慣れさておくか。


「いい味だ」


 マガルスク王国の貴族は紅茶好きなんだろうかね? 


「異世界の品なので大量には渡せませんが、数日飲めるくらいにお贈りしますよ」


「それはいい。だが、体がよくなったら酒を飲みたいものだ」


「酒好きで?」


「ああ。若い頃は蒸留酒をよく飲んでいたものだ」


 貴族に渡るくらいには蒸留酒が作られていたんだ。駆除員が広めたか?


「なら、酒もお贈りしますよ。男爵と積もる話もあるでしょうからね。一緒に酒を酌み交わしあってください」


 生きて再会できたことを乾杯するといいでしょうよ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る