第23.5章

第1108話 *ミリエル* 要塞

「ミリエル様。十六将のマグラグと思われる軍団を発見しました」


 マリットル要塞から運ばれてきたカロリーバーをルースブラックから降ろしてたら職員の一人が駆けてきた。


「写真は?」


「遠くからのものですが、撮りました」


 かなりの数がいるようね。


 フォークリフトを降りて職員を集めてもらった。


 駆除隊は出払っているので要塞には職員とドワーフの部隊、モニスさんがいるくらいだ。


 ドワーフの部隊は毎日訓練をしているのでゴブリンの軍勢がきたところで敵ではない。ドワーフって統率力が高く、集団戦に長けた種族なのよね。


 ……タカトさんが日本人みたいって言ってたわ。確かにタカトさんみたいな真面目で勤勉なところがあるわよね……。


 作戦室に集まった者たちを見回し、偵察に出ていた職員から説明を受けた。


「つくづく無限に湧いて出る生き物よね」


 少し前に六割は駆除したと女神が言ってたのに、とても四割とは思えない。ざっと見ただけで十万匹はいる感じだわ。あれだけの数をどうやって食べさせているのかしらね? 未だに謎だわ。


「駆除員が五年も生きられないのが本当によくわかるわ」


 日を過ごす毎にゴブリンの数が増えていく。そんな状況で生きていける者なんて皆無よ。そのことが最初からわかっていなければ対策なんてとりようもない。仮に知らされたとて十万二十万もゴブリンを駆除する方法なんて思いつかないでしょうよ。


 タカトさんは幸運にも当たりをすべて引いている。いや、すべての選択肢に成功しているというべきかしらね。十万二十万匹ものゴブリンを相手に有利に立ち回っているんですからね。これは真似できるものではない。タカトさんだからこそできる行動だわ。


「そうですな。これはもう侵略戦争。それを個人でどうにかしろとか女神様は酷すぎます」


 タカトさんが女神を嫌う理由がそれね。わたしとしては大きな声では言えないけど。


「ふふ。でもまあ、今のわたしたちは侵略戦争を覆させるだけの組織となった。報酬分配に頭を悩ませなくて大助かりだわ」


 冗談っぽく答える。


 組織は組織で面倒なことがある。戦意を高めたり報酬を約束させたりとかね。


「さすがにこんなことは数十年に一回の出来事でしょう。数十年いい暮らしができるようしっかり稼いでちょうだいね。また平和な時間が……過ぎないか。駆除員がいる限り問題は出てくるでしょうからね」


 まだ魔王がいて、勇者すら勝てない存在がいる。きっといろんなことが起こるでしょうよ。


「それは暇にならなくていいですな。マスターの側にいると生きている実感を与えてくれますから」


 職員たちが笑顔で頷いた。


「そうね。生きているって楽しいわね」


 わたしも笑顔で返した。


 酷い過去を懐かしく思うくらいにわたしは今、幸せを感じているのだからね。

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