第1106話 *雷牙* VS轟鬼ルグオグ

 光の中から出たら広場に出た。


 転移魔法陣があったから出たところも地下かと思ったが、天井もなくこれと言った高い建物もない。壁に囲まれたところだった。


 なんて感想はあと。まずは逃げているドワーフにブーメランを飛ばして首を跳ねてやる。


「じゃあ、あとはがんばってね」


「おう。そっちもな」


 手のひらから飛び下りてホームに入った。これからラダリオンの次くらいに強い巨人が暴れるのだ。そんなところにいたら潰されちゃう。十分くらいはホームに退避していましょう。


 地面に下りたらすぐにホームに入った。


「雷牙、無事転移できたみたいだな」


 おれの行動をわかっていたようで、タカトが先にホームに入っていた。


「うん。なんか要塞っぽいところに出た。気温は高くて三十度近いかも」


「太陽はどうだった?」


「そこまで見てないけど、感じから夕方にはなってなかった」


 そんなに傾いてなかったはずだ。


「そんなに時差はないみたいだな。千キロも離れてないかもな」


 千キロって距離の感覚がわからないが、他の大陸にあるのは確か。海を渡らないといけないんだから何日もかかる距離なんだろうよ。


「今、タダオンたちは暴れていると思う。魔物がたくさんいて、空には竜が十匹くらい飛んでた」


 ざっと見ただけだから見逃しはあると思うけど。


「そっか。まあ、タダオンたちなら数分で制圧するか。今のうちに出すものを用意しておいてくれ。オレは内部を探索するから。夜にまた聞かせてくれ」


「了解。カロリーバーと薬は全部出してもいいの?」


「ああ。ミリエルのところに運ばれてくるから問題ないよ。必要なときは回復薬小を持っていって構わないよ。じゃあ、そっちは頼むな」


「任せて」


 タカトがホームから出ていったら用意を始めた。


 と言ってもそうたくさんあるわけじゃない。巨大化させられないのでカロリーバー、薬、発信器くらいだ。


「そろそろかな?」


 窓から外を確認。大丈夫そうなので用意したものを外に出した。


 まずは発信器を地面に打ち込む。位置把握は優先されることらしいんでな。


「ん?」


 打ち終わると、石畳が動いて四メートルくらいの……なんだ? ゴブリンか? オーグか? 顔を隠す兜と全身を覆う革鎧でなんなのかわからない。少なくともサイズからして巨人ではないはずだ。


「……いろんなのがいるな~……」


 タカトが生命に溢れた世界だと言ってたけど、確かにいろんな命がいるよな。おれ、本当に狭い世界で生きてたんだな~。


「ナンダ、オマエ?」


「お、しゃべった」


 カタコトだけど。


「オレ、ライガ。オマエノテキ」


 なんでかカタコトで返してしまった。


「テキナラコロス」


「オッケー。オレモオマエヲタオス」


 戦闘準備はできている。誰が相手だろうが油断するつもりはないし、退くこともない。デカいだけで勝てると思うなよ。

 

 相手が動く前にこちらが先に動き、相手の視界に入らないように動く。ん? なんだ? 目の前に数字が現れたぞ?! うっ、体が熱い!


「クソ! それどころじゃないんだ、消えろ! 邪魔だ!」


 腕で払ったら消えてしまった。な、なんなんだ、いったい? 


「いや、今はどうでもいい!」


 よくわかんないけど、熱は収まった。が、なんか体が異常に敏感になってる! クソ! 落ち着け! 大丈夫。敏感になっただけだ。体を慣らせ。よし、いける!


 しかしこいつ、振り回す力は強いが、動きはラダリオンの半分にも届いていないな。おれの動きに目がついてこれてないし、気配にも追いついていない。強さにかまけて日々の訓練を疎かにしているんだろう。上には上がいるってことを教えてやるよ!


 マルダートを取り出し、起動スイッチを押す。


 十五秒で爆発するので十秒まで回避に努め、革鎧の隙間に入れてやる。


「バイバイ──」


 わざと視界に入って別れの挨拶をしてやり、笑顔でホームに入った。


 結果を見れないのは残念だけど、マルダートの爆発から生き延びれた今度はちゃんと止めを刺してやるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る