第1098話 *雷牙*
メビたちの侵入ルートは山の反対側なので、簡単な装備だけにして向かった。
巨人たちが出入りしているところがあるだろうけど、そちらには発信器は打ってないから出入りができるかわからない。通れないこともあるから確実に向かえるルートをいくとしよう。
ゴブリンがたくさんいたが、また増えてくれたら稼げる。おれたちの未来のために増えてくれ。
洞窟に入ると、報告にあった豚の魔物が現れた。
「こんな魔物がいるんだな~」
いい匂いがしたが、人間を食ってるっぽい。そんなのを食うのはちょっと嫌だ。殺しておくだけにしておこう。
鎧を着て剣を持っているが、そこまで強くもなく俊敏でもない。首筋を斬ってやれば問題なく行動不能にできた。
止めは刺さずに先を進み、発信器の信号を頼りに向かった。
「土嚢?」
メビが塞いだのか?
通路にはゴブリンもいないので上のほうを通れるだけ崩して中に入り、ホームにある土嚢を持ってきて塞いだ。
「明るいな」
メビたちがライトを照らしているのかな? 人の声もする。
警戒しながら進むと、たくさんの人が泣きながら炊き出しの料理を食べていた。
「メビ、聞こえる? 土嚢で塞いだ通路から入った」
人がいすぎてメビがどこにいるかわからない。プランデットで呼び出してみた。
「お疲れ。反対側にいるからこっちきて」
「了解」
捕まっていた人間を避けながら向かうと、昔、屈強だったかもしれない男たちが集まっていた。
「どんな状況?」
「戦う戦力を整えている。カロリーバーと薬、出せる?」
「うん。ミリエルが用意してくれたから大丈夫だよ。ただ、回復薬は少なくなっている。回復薬中と大はもう十粒もないかな? 回復薬小なら四瓶はあるよ」
ただ、回復薬小を使うならエルフの薬を使ったほうが効果が高いから回復薬小って溜まる一方なんだよね。
「カロリーバーを頼むよ。薬は出せるだけ出して」
「了解」
ホームに入り、ダストシュートを使ってパレットごと出した。
窓を見てカロリーバーが運ばれたら次を出していく。
さすがにすべてを出すとタカトのほうが困るから一パレットだけ残しておく。ラダリオンがいれば大きくさせられるからな。
外が片付けられたキャンプ用品を積んだリヤカーを押して外に出た。
「ライガ、城の中の魔物やゴブリンを排除してきてちょうだい。あたしらはここの連中を外に連れ出すから」
「じゃあ、城の中はそんなに探ってない感じ?」
「だね。それはマリルとマルゼにやらせるよ」
タカトが引き取った二人を見た。
タカトは二人をビシャみたいに育てたいとか言っていた。確かにセフティーブレットには指揮官タイプが少ない。大人数を従えるには強いか賢いかじゃないかと無理だ。たぶん、タカトは将来に向けて二人を育ててるんだろうよ。
「そっか。がんばってね。タカトも期待してたから」
おれは二人にどうこうといった感情はない。たぶん、駆除員としての意識があるからだろう。駆除員で話していると指揮官クラスがいないことがよく上がってくるからだ。
「……う、うん。がんばる……」
照れたように頷いた。
「ライガ。外はどうなの?」
「巨人の軍団が現れたけど、ラダリオンたちが圧勝したよ。今は食事や怪我を治しているところ」
メビに見せたかったよ。ラダリオンの無双を。
「相変わらずラダリオンねーちゃんはバケモノだよな。あの人だけには一生勝てる気がしないよ」
「アハハ。それは同感。もう生物としてのリミッターが外れてるんじゃないかと思う」
でなければあの強さが証明できない。空が飛べる日も近いんじゃない?
「んじゃ、掃除してくるよ」
「了ー解」
お互いサムズアップして掃除に向かった。
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