第1096話 *タダオン*

 完全に降伏したランディールの民を一ヶ所に集める。


「思った以上に女が多いな」


 前線に出たランディールの戦士たちは約八十人。そのうち女は三十人。大きな一族は女も戦士にするんだな。タカトが数は力と言っていたのがよくわかるよ。


 ……いやまあ、六人で八十人を倒しておいて説得力があるかはわからんがな……。


 質がいいのはタカトについたから。不運なランディールの戦士たちには同情しておこう。


「タダオン。ホームにあったカロリーバーが全部なくなっていた。メビのほうでなんかあったみたい」


「ランディールの民がいたか?」


 戦士だけ連れてきたとは思えない。世話をする者もいるはずだ。


「まだわからない。鍋とシチューの材料を買ってくるから釜戸の用意をしていて。あたしたちを見たらタカトもホームに入ってくると思うから」


「わかった。リー、ソルの二人は警戒だ。カル、ここを頼む。おれは散った武器を集めてくる」


 この日のために集めた武器らしい。放置しておくの気の毒だろう。枯れ木を集めるついでに回収しておこう。


 広範囲に散らばっていたので回収に時間はかかり、大量に抱えて戻ってきたら空気がわかるほど重かった。


 まあ、無理もないか。一族の命運を賭けた戦いで負けた。自分たちの明日をおれたちに握られたとなれば明るい気分ではいられないだろうさ。


「──お待たせ。タカトもこっちにくるって」


 ラダリオンがホームから出てきた。


「なにかあったのか?」


「山の中に捕まっていた人間がいたって」


「人間なんて捕まえてどうするんだ?」


 バデットを作る材料にしていたのか? 


「トールのエサだ。人間を好むよう魔物に造り変えられたって話だ」


 ルカールが答えた。


 人間を食うように? それはまた悪食だな。よほど飢えた魔物でもなければ人間は食わない。どうも人間は不味いみたいな感じだ。


「魔王は相当人間を嫌いなんだな」


「将軍は、女神に創られた人間は敵だと言っていた。本来、栄えるべき種族は我々で、虐げられてきたから反抗しているそうだ」


 栄えるべき種族? タカトの話では巨人、ドワーフ、エルフの順で滅んだのではないかと言ってたな。その三つのうちの一つの種族が魔王なのか?


「なんでも構わない。タカトの敵になるなら倒すだけ」


 ラダリオンは単純だ。だからこそ強いし、迷いもしない。すべての罪は自分が負うとばかりの覚悟だ。これに勝てるヤツはいないだろうよ……。


「タカトにつくならそれでよし。敵になるなら次は殺す。女も子供も老人も。すべてを殺す」


 自ら悪者になるラダリオン。そして、それを利用しろとおれを見た。


 ……タカトの入知恵だな……。


 ラダリオンにそんな考えができるヤツじゃない。タカトが考えたものだろう。


「ランディールのことはおれが責任を持つ。それでいいか?」


「好きにしたらいい。タダオンに任せる」


「わかった。おれが責任を持とう」


 おれも自由でいたいが、おれも都合のいいことを言ってしまった。その責任を果たさないといかんだろうよ。


 狙ったかのようにタカトが降りてきた。


「女神の使徒だ。礼を持って迎えろ」


 ルースミルガン改から出てきたタカトに敬礼で迎えた。

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