第1095話 *ミリエル*

「あら?」


 荷物を取りにホームに入ったら壁に積んでいたコンテナボックスが大量に消えていた。


「なにかあったのかしら?」


 コンテナボックスにはカロリーバーと薬が入っていた。数百人分がすべてなくなっているなんて異常事態だわ。


「確か、アポートウォッチはメビとマリルが持っているはず」


 ってことは転移魔法陣のところにたくさんの人がいた、ってことになるわね。そうでなければカロリーバーと薬が一気に消えることはないもの。


「一気になくなるってことは数百人はいるみたいね」


 もっといれば完全に足りないわね。


 事前にカロリーバーと薬の量はタカトさんから二人に伝えてある。足りなければタカトさん経由でホームに連絡が入るでしょう。


「あ、回復薬」


 足りなければ回復薬を使うはずと、仕舞ってある棚を見たら回復薬中と大の瓶が二つずつ消えていた。


「……これは、千人以上いるわね……」


 それなら完全に足りない。今のうちに補給しておかないといけないわ。


 必要なものを持ったらすぐ外に出た。


「ルー、メー、ライカ。すぐにマリットル要塞に飛ぶわ。サイルス様、指揮をお願いします」


「なにかあったのか?」


「タカトさんのほうで相当な数の生き残りがいたみたいです。物資がごっそり消えていました。すぐに補給するためマリットル要塞にいってきます」


 大量に補給するならガーゲーに飛ぶほうがいいけど、さすがに時間がかかる。今は少しでも補給できるアレクライトに飛んだほうがいいはずだわ。


 すぐにルースミルガン改に乗り込み、マリットル要塞に飛んだ。


 発信器の打ち込みが進んでいるようで、半分も飛ばないでアレクライトと通信できた。


 すぐに状況を説明し、アレクライトに到着するとカロリーバーがパレットに積まれていた。こちらも仕事が早いこと。


「ミリエル。そんなに大変なのか?」


 アルズライズさんもやってきた。


「まだ状況はわかりませんが、ホームのカロリーバーと薬がすべてなくなりました。おそらくマガルスク王国の民が捕まっているのでしょう」


「知能のある魔物は人を食うって聞いたことがある。エサとして捕まえていたのかもな」


 それ、わたしも聞いたことがある。悪いことをすると魔物に食われるってね。あれ、本当だったんだ。


「アレクライトって薬を造れましたか?」


 ガーゲーから補給はされているとは聞いたけど、造っているとは聞かなかったわ。少し前までガーゲーにライガがいたから気にもしなかったのよね。


「少しは造れるようにしてもらったが、数は少ないな。余分はパレット半分だ」


「全部もらってもいいですか?」


「ああ、持っていけ。ルースブラックに連絡してガーゲーに飛んでもらったから」


「もう一つのグーズルースを寄越してもらうことはできますか? もしかするともっと必要となるのでミズガル伯爵の港にいてもらいたいのですが」


 ミルズガンと繋がりがある伯爵で、結構大きな港を持つ。まだ陥落してないので後方支援をしてもらいたいのよね。ガーゲーにも半日でいけるしね。


「わかった。それはこちらでやっておこう。カインゼルたちにも連絡して向かわせる。海兵隊は海に置いたほうがいいからな」


「助かります」


 やはり優秀な人よね。タカトさんが絶対の信頼をよせるのも頷けるわ。


「では、パレットをホームに入れますね。なにか必要なものはありますか? 遠慮なく言ってください」


 駆除員がいない状態だし、補給も少なくなっているでしょうよ。


「そうだな。それなら缶ビールを頼めるか? 思ったより消費が早すぎてな。補給してもらおうと考えていたのだ」


 皆お酒好きよね。まあ、わたしもたまに飲んじゃうけど。


「わかりました。パレットで出しますね」


 パレット買いしたほうがなぜか安いのよね。十パレくらい買っておきますか。


「薬が届いたらそっちに送るように言っておくよ」


「ありがとうございます。またきますね」


 補給が終わり、マリットル要塞の状況を聞いたら砦に戻った。

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