第1094話 *マニルス*

 ここに連れてこられて何日が過ぎただろうか? こうして意識を持ち続けるのも限界に達してきたよ……。


「ん?」


 なにか魔物たちが騒がしいな? なにかあったのか?


 異変に意識は目覚めてくれたが、もう何日も食ってない。体はもう動かすのも困難だ。


 だが、この異変が好機だったら今、動くしかない。こんなところで死んでられるか! 先に逝った部下たちが浮かばれぬ! 根性を出せ!


 残り少なくなっている魔力を使い、声を飛ばした。


 なにが起こっているかはわからない。だが、なにかは起こっている。もしかして国王軍が生き残っていて、ここを見つけて救いにきてくれたのかもしれない。


 万が一、いや、勘違いかもしれない。絶望が見せた幻覚なのかもしれない。無駄なのかもしれない。それでも、だ。奇跡を信じておれは動く。こんなところで死んでたまるかよ! おれは絶対に生き抜いてやる!


 声を飛ばす魔法で助けを呼んだ。


 まだ意識を持つ者も異変に気づいて騒ぎ出した。まだ絶望をしてない者がいることに口角が動いてしまった。


 しばらくして光が現れた。


 なにか上で話していたが、光がこちらに向けられた。


「た、助けてくれ」


 残りを使って助けを求めた。


 気が遠退きそうになったら体に熱いものが流れてきた。


「薬を打った。すぐによくなる」


 女の声がはっきりと耳に届き、体がどんどん熱くなっていき、意識がはっきりしてきた。


「次はこれを飲んで」


 口になにかを入れられ、甘いものが流れてきた。な、なんだ、これは?


「もう一回薬を打つ。これで考えられて声も出せるはずだ」


 腕に痛みが走り、また熱いものが流れてきて体に熱を帯び始めた。


「そして、これを食べて」


 固形のものを口に入れられてそれを咀嚼した。


「あまり時間がない。全快はしてないだろうけど、これを死にそうなヤツに打って。使い方はこうだ」


 木の棒みたいなもの渡され、無理矢理手をつかまれて隣にいたヤツの腕に押しつけ、親指で突起物を押された。


「よほどの重傷でもなければこれで死ぬのは回避される。死なせたくないのならがんばって。全部使ってくれて構わないから」


 助けられる。それさえわかればなんだっていい。薬は箱にたくさん入っているようだ。もう誰も死なせない!


 まず意識を残っているヤツに打っていき、どこからだしたかわからない甘い水を飲ませた。


「元気になったヤツは他の穴に向かえ!」


 本当にどこから出したのか梯子がかけられていた。


「上に仲間がいる。食べるものもあるから遠慮なく食ってくれて構わない」


「すまない。皆に行き渡るように配れ! 全員生きて外に出るぞ!」


 やっとの助けだ。仲間割れで死んでられるか!

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