第1093話 *メビ*
「な、なんだ!?」
いきなり地面がなくなり、バランスを崩してしまった。
チッ。周囲ばかり気にしてたから下に意識を向けてなかったよ。
それでも体を回転しせて平らな場所に着地。飛びかかってくるゴブリンを撃ち払ってやった。
「キリがないな!」
さすがに飽きてきた。もう狩りでなく作業になってきたよ。
それでもやらなきゃゴブリンは減らない。飽き飽きしながらも撃ち殺していると、穴の下から声が聞こえた気がした。なんだ?
「気のせいか?」
サプレサーをつけて撃っているとは言え、ゴブリンどもは狂乱化中。ギャーギャーとうるさい。人の声が聞こえるとかある?
まあ、あたしは鼻より耳のほうがいい。この中でも聞き分けられても不思議ではない。
自分の耳を信じて穴を下りていく。
「え? もしかして階段?」
激しい段差だな~と思っていたが、同じ段差に気がついてこれが階段だと察した。
「魔王軍に巨人がいるってこと?!」
ロースランとかのサイズじゃない。完全に巨人サイズの階段じゃない!
さすがに巨人には勝てないよと思っていたらなんか通路っぽい段に下り、左右に通路が延びていた。
「人の声だ」
助けを求める声が城側の通路から聞こえる。誰か捕まっているのか?
ゴブリンを引き込まないようミジャーの粉を取り寄せて階段の下に放り投げた。
散らばるように弾を食らわせてやり、通路に入った。
狂乱化していてもミジャーの粉は効果があるようで、階段の下に向かってくれた。
請負員カードを出して土嚢を買って通路に積み上げた。これでゴブリンが入ってくることはないだろう。ふー。
さすがに一苦労だったのでスポーツ飲料水を買って休憩。
「やっぱり人の声だ」
ゴブリンの悲鳴が消えたことで通路の奥から人の悲鳴やら啜り泣き、助けを求める声がしっかりと聞こえた。
通路には灯りがないので416のライトをつけた。
「かなり奥まで続いてそう」
何年前から造ってたんだろう? 十年二十年で造れるもんじゃないでしょう。魔王軍って何百年も前から動いてた、ってこと?
サイリウムを折って通路を進むと、牢屋に出た。
いや、牢屋って呼んでいいのかわからないけど、深い穴に人間が入れられていた。
……酷いもんだ……。
いや、魔王軍にしたら人間なんてエサでしかないか。人間もあたしらを獣としか思ってなかったからね。
「──!」
物音がして416を構えたらマリルとマルゼがいた。
「びっくりさせるなよ」
意識を捕らわれていたとは言え、すぐそこまで近づかれていたとは。
「先にきてたのはこっち。てか、これなに? なんで人が穴にいるのさ?」
あー。マリルたちにはわからないか。さすがのタカトもこんなの予想もできないだろうからね。
「エサだよ。魔物は人を食うからね」
弱肉強食とはよく言ったものだ。弱い者は食われるためにいるんだなって痛感させられるよ……。
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