第1092話 *マリル*

 城の中に入ると、ゴブリンがいなくなっていた。


「ねーちゃん、これ?」


「油断はするな。灯りはあるからなにかはいるはずだ」


 造りは人間サイズ。それくらいのがいるってことだ。


 油断なく奥に進むと、猪っぽい顔を持つ魔物? が現れた。


 ……なんかどっかで見たような……?


 鎧を着てそれなりの知性を持っているようだが、ここにいる時点でセフティーブレットの敵。報酬を得られないだけのゴブリン亜種でしかない。見つけたら殺す。慈悲はなし、だ。


 ただ、ゴブリンより生命力と魔力抵抗値が高いようで、EARでは殺せなった。


「マルゼ。P90だ」


 ああいう敵は貫通力が高いほうがいい。通路もそこまで広くもないしな。


 リュックサックからP90を取り出し、マガジンをレッグポーチに詰め込んだ。


「ねーちゃん!」


「わかってる!」


 ガシャガシャと鎧の擦れる音は聞こえていた。侵入されることを想定してない動きだ。


 弾を装填して現れた──あ、豚だ。おじちゃんに見せてもらった豚に似てるんだ!


「食ったら美味いかな?」


「……ねーちゃん。腹下しそうだから止めておきなよ……」

 

 冗談だよ。もっと美味しいものが食えるんだからあんなのは食わないよ。でも、味は気になるから一匹は持って帰ろうっと。


「意外といるな」


 入ったらいなかったからそこまではと思ってたのに、上から土砂崩れのように下りてきた。寝てたのか?


「ごめんよ、起こしてしまって。お詫びに永遠に眠らせてやるよ」


 金属の鎧を着たヤツもいたが、P90の弾に勝てるヤツはいない。


 転移魔法陣を優先しようにも数が多すぎて通り抜けられない。って、後ろからも現れたよ!


「マルゼ、後ろは頼むよ」


 さすがにこんな通路で塞がれたら身動きができない。マルゼにも撃ってもらうとしょう。


「ねーちゃん、ヘルメットをして」


 はぁ? なにする気? とは思ったが、すぐにプランデットを外し、首の後ろに収納してあるヘルメットを起動させた。


「食らえ!」


 リボルバーのグレネードランチャーを出したマルゼが豚どもに催涙弾を放った。


 ……いつの間に防毒マスクをつけてたんだか。我が弟ながらはしっこいやっだよ……。


 鼻の穴が大きいだけに催涙ガスをたくさん吸っている。わたしもどんなものか試したけど、なかなか凄まじいものだった。おじちゃんのいたところは恐ろしいもんだ。


 なんて呆れている場合じゃなか。マルチシールドの形を変えて豚どもに突っ込んで道を作った。


 催涙ガスは吸いすぎると死んでしまうので放置。上は豚どもがいたので下に向かった。おじちゃんによれば隠すなら高いところか低いところ。ここでなら地下だろう。ほら、ゴブリンが現れた。


「お前らは死んでわたしたちの糧になれ!」

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