第1086話 *マリル*

 危ない危ない。ゴブリン駆除に夢中になりすぎて転移魔法陣のことを忘れるところだった。


「マルゼ、装備を換えるよ」


 EARでは威力が高くて岩を破壊しかねない。ゴブリンを殺すだけなら9㎜弾で充分。弾頭が柔らかいものなら跳ね返ることもない、そうだ。


「了解」


 マルゼが前に出てEARを撃ち、わたしは背後に回ってアイテムバッグ化させたリュックサックからスコーピオンを出した。


 マガジンはアポートポーチからホームから取り出す。空になったものはレッグポーチに戻す。マガジンは高いから使い捨てできないの。


「装備オッケー!」


 アポートポーチからマガジンを取り寄せてスコーピオンに差し込み、弾を装填。前に出て引き金を引いた。


 洞窟の奥からゴブリンが溢れ出てくる。このままだと通路が埋まってしまう。


「強引に進むよ」


 ガーゲーでわたし専用の戦闘強化服を造ってもらった。元の四から五倍は筋力が上がっている。


 ……なのにメビに勝てないのだからバケモノだよ……。


 マルチシールを構え、壁と化したゴブリンに突っ込んだ。


 後ろのことは気にしない。洞窟から出たら外の者の獲物。わたしたちを追ってきたらメビが撃退。今は目的を優先させる。


 まあ、洞窟の出入口を爆発してやればいいんだけど、あとで転移魔法陣再利用されたら困る。しっかりと潰しておかないといけないのだ。


 ゴブリンを吹き飛ばしながら通路を奥へ奥へと進む。


 元々あったところを掘り直したようで、分かれ道はない──と思ったら大空間に出てしまった。


「……し、城……?」


 その大空間に城みたいな建造物が造られていた。


「止まるな! 目的は変わってない!」


 その言葉に我を取り戻し、マルゼが握るEARを奪って押し寄せてくるゴブリンどもを薙ぎ払った。


 本当にわたしは経験不足だ。咄嗟のことに思考が停止してしまう。おじちゃんの言うとおりだ。


 でも、それで止まることは許されない。もうわたしたちは敵の中にいる。敵を排除しなければわたしたちが死ぬだけだ。


「ゴブリンは数だけだ! 遠距離攻撃がなければ怖くはない! 突っ込むよ!」


 特異体とかもいるかもしれないが、この限られた空間ではそれほど意味があるとは思えない。大抵のゴブリンならアサルトライフルで殺せるし、首長でも対物ライフルで殺せる。その他の武器も取り寄せられるので恐れる必要はないのだ。


「マリル。あたしが囮になる。ゴブリンを引き寄せるから二人で転移魔法陣を破壊しな」


「了解」


 悔しいが、経験豊富なこいつの判断のほうが信頼できる。嫌いだからって反論したらおじちゃんに呆れられる。認めるところは認める。そのくらいの度量はわたしにだってある。


 ルンを交換して城のほうに駆けた。

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