第1083話 *マリル*
「──マリル。中腹辺りからゴブリンが集まっている。EARを使え」
おじちゃんからの通信が入った。
「了解。マルゼ、EARだ」
今回マルゼは荷物持ちだ。
本当なら十人くらいで挑む作戦だったけど、メビがそんなにいらない。三人で充分と言ったからだ。
「まっ、あたし一人でも充分だけどね」
ふざけるな! あたしだって一人でやれるさ! そう叫びそうになったけど、おじちゃんがわたしの頭を撫でた。
「これは経験だ。大多数と戦えるチャンスはそうはないからな。マルゼと一緒に経験しておけ。メビは万が一のときまで手を出すなよ。お前はたくさん経験しているんだから」
「人が増えると出番が少なくなるから困るよね」
「お前はもっと知識を溜めろ。三年後にマリルに追い抜かされるぞ」
こいつ、頭悪いの?
「考えるのはタカトの仕事。あたしは命令されたことを確実に成功させるのが仕事だよ。今からでもゴブリンを殲滅させろって命令してくれたら朝まで終わらせるよ」
どうやら脳筋なだけだった。
おじちゃんは苦笑するばかり。こんなのを相手しなくちゃならないとかおじちゃんは大変だな~。
だからわたしに考える訓練をさせてたんだ。本能でしか動けない獣より考えることができる人間のほうがおじちゃんとしてはありがたいんだろう。
うん。わたしは獣にはならない。冷静に考えられる人間になる。おじちゃんはそれをわたしたちに求めているのだから。
「たくさんいるの?」
「ざっと二千匹だな。まあ、すべてを駆除する必要はない。ほどよく駆除して、洞窟内に突入してくれ。中に入ったらマリルの判断と決断に任せる」
「安全第一、命大事に。無理なら撤退するよ」
「ふふ。それでいい。それでこそマリルだ」
おじちゃんの嬉しそうな声がわたしの感情を爆発させそうになる。でも、こんなときだからこそ冷静にならなければならない。いや、冷静に思考できるようにならなくてはいけない。
わたしは理性を持った人間だ。人間として考え、人間として戦うんだ。
「マルゼ。次を用意しておいて」
「任せて! おれだっておじちゃんの側にいるためにここにいるんだから!」
そうだ。それを証明するためにも恥じぬ戦いを見せなくちゃならないのだ。
右でEARを構えながら左手でマルダードを投げ放った。
「伏せろ!」
そう叫んで地面に滑り込むよう伏せた──その直後に大爆発。前方にいるゴブリンを吹き飛ばしてやった。
「ねーちゃん、洞窟崩れない?」
「大丈夫。崩れないように爆発させたから」
ちゃんと考えて放っている。そんなバカはしないよ。
「爆発地点を迂回しながら洞窟に向かうよ」
外にいのゴブリンを混乱させてから洞窟に入る。後ろから押し寄せられても困るからね。
「前方にゴブリン! やるよ!」
引き金を引き、前を塞ぐゴブリンどもを撃ち殺してやった。
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