第1081話 *タダオン*
マーダ族の願いが成就された。
神より光の御子を捜せと天命を受けてから数千年。遥かな時を超えて今、その光の御子が現れたのだ。
とまあ、感動的なことはなく、戸惑いのほうが強かった。
あの頃はただ無駄に腹を空かせているだけの子供としか思えず、光の御子など少しも思わなかった。いや、思えるヤツなんているほうがおかしい。ただのお荷物。捨てて当たり前の存在でしかなかったのだ。
だが、タカトはそれを見捨てなかった。
底なしの胃を持つラダリオンを拾い、満足するまで食べさせた。
タカトは笑っていたが、今でもとんでもない量を食べている。この世界にきて間もなかったタカトには大きな負担だったはずだ。
それでもタカトはラダリオンを捨てず、満足するまで食わせ、最強の戦士へと育てた。
敵なしと自負していたおれが赤子のように扱われ、触れることもなく地面に倒された。
きっとタカトにしかできないことだっただろう。光の御子に育てあげたのはタカトだ。タカトにしかできなかったことだろう。
靴がどうこうと言ったが、ラダリオンの走りについていくのがやっとだった。遅れまいと必死に走ったものだ。
最後の走りもついていくのやっとだ。
「バデットゴーレムは情報とおり十体! 完膚なきまで破壊しろ!」
ラダリオンの叫びにベネリM4を構えた。
「まだ加速できるのかよ!」
ついていくのがやっとだったのに、ラダリオンはさらに加速して遠くにいるバデットゴーレムに向かっていった。
「気を使われたか。皆! やるぞ! ソル! 足を止めろ!」
この中で一番弱いヤツだが、遠くにいるのを当てる技術は一番だった。
そんなヤツだからか、狙撃に夢中になり、おれたちですら一発で殺せる銃の虜となった。
おれたちは射線に入らないようそれぞれの標的に駆けた。
ソルの撃った弾丸がバデットゴーレムの右足を吹き飛ばした。
タカトの情報からバデットゴーレムの強度は弱い。ただ、集まっている死体の数が多いとのこと。核を潰さないとまた死体が集まり、バデットゴーレムとなるかもしれないとのことだった。
だから死体を肉片と変え、核を潰す必要がある。
「食らいやがれ!」
おれはあまり銃は好きになれんが、大事な剣で死体を斬るのは嫌だ。離れたところから倒せて返り血を浴びることもない。道具としてなら最高のものだ。
八発の散弾を足先から当てていき、すぐに弾を装填。まんべんなく死体を肉片と変えていった。
「これが核か」
心臓の辺りに赤黒い魔石があった。
初めて見る魔石だが、壊すのだからなんでもいい。弾を装填し、赤黒い魔石に向けてすべてを撃ち出してやった。
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