第1075話 *メビ*

 マリルとマルゼを見たとき、ちょっとイラッとしてしまった。


 別にタカトの側にいるからじゃない。その甘ったれた顔が気に入らなかったのだ。


 タカトが側に置いているなら二人になにか見所があったんだろう。タカトはその辺ははっきりしている。見所がないヤツは絶対に側に置いたりしない。巻き込まないよう遠ざける。


 二人はまだ子供だけど、あたしの目から見ても能力は高そうだった。


 でも、その能力は十全に引き出されてない感じもした。


 タカトの見る目は凄いと思う。その能力を見極めるのも凄い。


 あたしもタカトに見出だしてもらい、ラダリオンねーちゃんの次くらいに信頼されている。


 絶対失敗できない場面で絶対成功させてくれる勝利の女神。


 そう言われたとき、表情を崩さないように必死だったけど、顔面崩壊するかと思うくらい嬉しかった。


 タカトは人を認めているようで、絶対の信頼を向ける相手は少ない。駆除員の四人、シエイラ、カインゼルのじーちゃん、アルズライズ、ミシニー、あたしとねーちゃん、サイルスのおじちゃん。たぶん、ここで絶対の線を引いている。


 まあ、駆除員と請負員にも線は引いているけど、これは仕方がない。駆除員は長生きできない。それに巻き込んではいけない線だからだ。


 きっとあたしが天涯孤独なら駆除員になれたかもだけど、あたしにはねーちゃんがいて両親がいて、帰れる場所がある。タカトはそれを守るためにあたしたちを駆除員に引き込むことはしなかったんでしょうよ。


 タカトが近くに引き込むのは生き抜ける力を持つ者だけ。できないヤツは近づけることはない。いつでも逃げられる位置に置いている。


 この二人はそれがわかってない。タカトの側にいられることが当然だと思っている。


 あたしはそれが気に入らないのだ。


 タカトの側にいるには生き抜く力と生き抜いてやるって意志が必要だ。死ぬような軟弱者はタカトの側にはいらないのだ。


「マリル、マルゼ。気の抜いた駆除をするならタカトの側から排除してやるからね」


 明日のために今日は鍛えることはしないけど、気の抜いた駆除をしたらタカトに嫌われようとこの二人をタカトから遠ざけてやる。


「ふん! あたしたちはいつだって全力だ! あたしらの前に現れたゴブリンはすべて駆逐してるよ!」


「そうだ! おれたちはこれからもおじちゃん側にいるんだ!」


 そんな二人にニヤリと笑ってみせた。


「その言葉、忘れるんじゃないよ」


 タカトは困ったもんだと苦笑いしているけど、あたしの言葉を咎めることはしない。ちゃんとあたしのことを理解してくれてるからあたしを止めることもしない。


 絶対死なせてはならない二人を絶対死なせないとわかっているから。


 あたしはタカトの信頼を絶対に裏切らない。だって、あたしを絶対的に信じているから。


 そう。あたしの誇りはタカトとともにある。この二人を守り、不測の事態が起きても必ず成功させてやる。

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