第1074話 み、皆、仲良くだよ
「おいおい、これから大駆除が始まるんだから体力を残しておけよ」
戻ってきたらラダリオンとメビに鍛えられたヤツらが倒れていた。
てか、容赦を知らない二人だ。こーゆーところが似てんだよな、こいつらって……。
「明日から始めるから今日はゆっくり休めよ。ラダリオン。タダオンたちに武器を渡してやれ。メビ、なにか使いたいライフルはあるか?」
セフティープライムデーでいろいろ買ったアサルトライフルをエルガゴラさんに魔法をかけてもらった。選び放題だぞ。
「狭いところだし、MP9でいいかな。マリルとマルゼを前面に出させるし」
「二人にはまだ荷が重くないか?」
「タカトは甘やかしすぎ。このくらいできないなら才能がないってこと。後方でちまちまゴブリンを駆除していたらいい」
いや、お前が厳しいだけじゃない? ゴブリンの巣に突入しろとか、十三歳の女の子と八歳の男の子にやらせるもんじゃないだろう。
「マリル。できるよね?」
冷たい問いに、マリルは顔を真っ赤にさせた。な、仲良くだよ、君たち……。
「当たり前! 余裕よ!」
この子、こんなに感情的だったっけ? もっと冷めた子だと思ってたのに……。
「自分の言葉には責任を持つんだよ。できもしないクセに大きい口を叩くヤツは早死にするからね」
本当に厳しいな、メビは。オレなら泣いちゃってるよ。
「マリル。無理なら無理と言っていいんだからな。今できなくても恥じゃないんだぞ」
お前の後ろにはマルゼがいる。引くべきときは引いたって恥じゃないんだ。
「無理じゃない! あたしはやれる!」
あーダメか。こうなったらどんな説得も聞きやしないよ。
メビを見ると、ニヤリと笑った。うん。こいつもどんな説得も聞きやしないや……。
「わかった。明日のために体を休めろよ。オレは明日の用意をしてくるから」
そう言ってホームに入る。
「あ、タカト。サンダル欲しいんだけど、いいの買ってよ」
雷牙がタブレットを持ってきた。
「あいよ。ガーゲーのほうはいいのか?」
「うん。あっちは平和だよ。あと、カロリーバーとスープは入れるだけ入れたから」
「ご苦労さん。サンダル、もうダメになったのか?」
雷牙は動きが激しいからすぐサンダルがダメになるんだよな。いっそのこと裸足のほうがいいのか?
「うん。ちょっと小さくなった」
小さく? と、雷牙の背を見たら少し伸びていた。
「おー。成長したんだな」
オレの腰までしかなかったのに、腹くらいまで伸びているよ。成長期に入ったか?
「ちょっとだけね。早くタカトくらいまで成長したいよ」
雷牙はこのサイズだから可愛いんだけどな。ってことは口にしない。雷牙も男の子だからな。
タブレットを受け取り、雷牙好みを探してやり、足のサイズを測って買ってみた。
獣足なのでちょっと改造する手間があり、もう慣れたものだ。
「うん、バッチリ!」
「それはよかった。外で慣らしてくるといい」
雷牙をダストシュートしてやった。
窓から外を覗くと、メビと話をしているのが見えた。久しぶりの再会を楽しめと、明日の用意を始めた。
目指す場所は山の中。恐らく洞窟を利用していると思うので、そう強力な武器は使えない。9㎜弾がいいだろう。ただ、ゴブリン以外もいることを考えてアサルトライフルも必要だろう。手榴弾ではなくフラッシュバーンを持たせるか。
メビとマリルはMP9を主力としてマルゼはP90を持たせるか。
新しく買ったMP9とP90、そのマガジンと弾を作業鞄に入れて外に出た。
「さあ、明日のために弾込めするぞ」
マガジンに弾をずっと入れておくとバネが効かなくなる。マガジンを長持ちさせるには駆除前に弾を込めたほうがいいのだ。
「魔法がかかっているマガジンを使わないの?」
と、雷牙が尋ねてきた。
「まだこの二人にはもったいないよ。弾のありがたみを学んでからだ」
メビがそう言うので魔法がかかってないものを使います。
「銃は消耗品。その限界を知らずして魔法がかかっているものを使ったら銃のありがたみを知らなくなる。壊れないように撃ち、壊れたらナイフを使って戦え。命を懸けて命を守れ」
誰の言葉だ? アルズライズか? カインゼルさんに言われたことないし。
「まあ、そうだね。二人ともまだまだ甘そうだしね」
雷牙も同意している。ニャーダ族、おっかねーな。
「二人は人間だってこと忘れないように」
体の作りが違うんだから自分たちと同じこと求めちゃイカンよ。
「アルズライズやじーちゃんも人間なのに、あたし、一回も勝ったことないよ」
いや、アルズライズやカインゼルさんは天元突破した男たち。人間の域に入れちゃダメなヤツだよ。
「獣人だから、人間だからは関係ない。強いヤツは強く、弱いヤツは弱い。それしかない。戦うすべを持ち、知恵を活かし、どんな強敵でも倒すという強い意志。あたしはそれをタカトから教わった。タカトはどんな敵を前にしても泣き言を口にしなかった。そのタカトの側に弱いヤツはいらない。いたいのなら強くなれ。その価値がないならあたしが排除してやる」
なんか怒った口調のメビ。ちょっと怖いよ……。
「あ、あたしは弱くない! 絶対に強くなってあんたなんか地面に転がしてやるんだから!」
「いつでもかかってきな。何度でも土の味を教えてあげるから」
敵役のように不敵に笑うメビ。ニャーダ族の教育は乱暴だよ……。
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