第1072話 それぞれのタイプ

 ミリエルと戦略ミーティングを終えたら他に知らせるために文章にする。


 文章はミリエルに任せて、オレは雷牙にプランデットで録画してもらう。文字と映像でセフティーブレットの面々に伝えるのだ。


「タカト、おれもそっちいっていい?」


「そうだな。稼ぎどきだし、構わないぞ。どこをやりたい?」


 最終決戦みたいなもの。雷牙を外したらもったいないだろうよ。


「どこがいい?」


 うーん。どこだ?


 最前線はミリエルのところだろうが、最前線なだけに一番戦力が整っている。ライバルが多いので稼ぎは低くなるだろう。


 だからと言ってオレのところも主戦力はラダリオンたち巨人だ。暴れたあとにはそれほどゴブリンは残ってはいないだろう。


 マリットル要塞も二万匹もいたらいいほうだし、兵士たちが稼ぐだろうからさらに儲けは少なくなるだろう。


 王都は……マルデガルさんたちで入る隙はないだろう。金や使えそうなものの回収もお願いしているから王都周辺でも稼ぐことは無理だろうよ。


 ランティアックや自治領区もゴブリンが集まってくることはない。集まってきたとしても数百くらいだろうな~。


 アリサたちのところか?


 遊撃隊だからゴブリンの多いところにすぐに迎えることができる。が、主戦場よりは少ないだろうからやはり稼げるかと言われたらそうじゃないと答えるしかないんだよな~。


「うーん。じゃあ、オレのところでやるか。ラダリオンたちが暴れる前に転移魔法陣があるところに突入すればそこそこ稼げるだろう」


「うん! わかった! いっぱい稼ぐよ!」


 いや、それでもそこまで稼げるとは思えないが、暴れられたら雷牙も満足するだろうよ。


「ミリエル。駆除員を回せなくてごめんな。そっちは頼むよ」


「任せてください。こちらは大丈夫ですから」


 心配はしてないが、癖の強いヤツらばからりだから纏めるのは大変だろう。負担を和らげてやれなくて申し訳ない。


「駆除は各地にいる隊の判断に任せる。連携とかは考えなくていいから」


「はい。そう書いておきます」


 オレもそう映像にしておく。魔王軍も連携しているとは思えない。将軍が命令して各個が動いているって感じだからな。


「オレらは五日後を目標に動く。それまでにマリットル要塞とカインゼルさんに連絡を入れるよ。残りはルースブラックに伝えてもらおう」


「はい。こちらはミルズガンに連絡しておきます」


 ミーティングを終えたら外に出た。


「ん? マリルか?」


 スカイブルーのルースミルガン改がオレのルースミルガン改の横に停まっていた。


 キャンプ地としているところに向かうと、マリルとマルゼが地面に倒れていた。え、なに?


「ど、どうしたんだ?」


 たぶん、二人を倒しただろうメビに尋ねた。


「ちょっと揉んでやっただけだよ」


 その言葉とおり手加減はしているようだ。傷一つ負わさず、体力を奪ったのだろう。二人とも全身汗だくだ。


「二人はどうだった?」


「弱すぎ。もっと最前線に立たせたほうがいいんじゃない?」


 そりゃメビから見たらそうだろうよ。こいつが異常すぎるのだ。


「さすがに最前線に立たせるような年齢じゃないからな、今はいろんな経験させているんだよ。この二人は指揮官タイプ。まあ、ビシャタイプだな」


 指揮官タイプはコミュニケーション能力が高くないとなれないし、いろんな経験をしておかないといけない。戦闘能力は二の次だ。


「ふーん。ねーちゃんより単純っぽいけど?」


「ビシャは素直なだけだ。人の悪意を知ったらミリエルに肩を並べられるんだけどな」


 その点、この二人は人の悪意を知っている。そこだけならミリエルに匹敵するだろうよ。


「ねーちゃんはあのままのほうがいいんじゃない?」


「ふふ。そうだな。あの素直さはビシャのいいところだしな」


 あの素直さは人を魅了したりする。支えられて伸びるだろうよ。


「あたしはどんなタイプなの?」


「お前はラダリオンタイプだな。絶対失敗できない場面で絶対成功させてくれる勝利の女神タイプだ」


 ラダリオンもそうだが、メビも同じだ。こいつならどんな強敵をも破ってくれると思わせてくれる。


「だから同じ狩り場に二人を置いておくのはとても贅沢なこと。だがまあ、今回はそこまで失敗できない状況でもないしな。メビ。悪いがこの二人を鍛えてくれるか? お前は少し人を指揮するってことを学んだほうがいい。そこにオレがいなければメビが状況を判断するしかない。そこだけはラダリオンよりメビほうが勝っているからな」


 ラダリオンは戦闘に極振りした一騎当千タイプ。連携とか集団戦とかできない。メビは特化してないだけにまだ集団戦ができるだろうよ。


「了解。ロースラン一匹くらいなら倒せるくらいには育てるよ」


「いや、ロースランはハードル高くないか?」


 まだ二人は対物ライフルを持てないだろう。


「そのくらいできないでタカトの側にいる資格はない。あたしは、このくらいのときにロースラン五匹は倒せた」


 いや、お前と比べても仕方がないだろう。


「どうする? 逃げたいなら逃げても構わないよ」


 悔しそうに睨むマリルに、嘲笑うように言うメビ。


「逃げない。ロースラン十匹くらい余裕で倒してやる」


「いい度胸だ。あたしがみっちり鍛えてやるよ」


 あ、あの、仲良くやろうね? 仲間なんだからさぁ……。

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