第1071話 戦略ミーティング

 巨人が戦闘を極めると、戦略級兵器になるよな。対物ライフルを持たせたらグロゴールが団体でやってきても瞬殺だろうよ。


「メビ。偵察にいくぞ」

 

 魔王軍が動き出したようなので、リミット様が教えてくれた位置にいってみることにした。


「了解」


 タダオンたちはラダリオンに任せてルースミルガン改に乗り込んだ。


「タカト、あそこ。十時方向を見て」


 プランデットを望遠にして辺りを見ていたメビが声を上げた。


 十時方向へ機首を向けると、巨人──いや、ランティアックに現れたバデットの肉ゴーレムが五十以上いるのが見えた。


「あれは絶望だな」


 皆と出会っていなければ、だけど。


 たが、今ならなに一つ怖くはない。対抗できる力がこちらにはあるのだから笑みすら浮かべる余裕があるぜ。


「巨人くらいあるかな?」


「そうだな。いいとこ十メートルってところだろう」


 この世界の重量だと、十から十五メートル。四肢があるものなら二十メートルが限界だと思う。魔力で身体強化できても三十メートルが限界じゃないか?


「あんな木偶を用意してどうしようってのかな? ラダリオンねーちゃんなら簡単にミンチにしちゃうよ」


「まあ、デカいのをたくさん揃えたら勝てると思ったんだろうよ」


 この時代は脳筋が多いからな。地元に根づいて侵略、とか考えもしないだろうよ。まさに力こそパワーって感じのヤツらばっかりだ。


「あそこの山に他からゴブリンを転移させる魔法陣があるそうだ」


「ゴブリンもたくさんいそうだね」


「そうだな。ざっと見ただけでも三万はいるな」


 本隊は別のところにいるのだろう。残りはミルズガンのほうに移ったかな?


「メビ。オレとあの中に突っ込んでくれるか?」


「ダメ。あたしが突っ込む。タカトは後ろにいて」

 

 そんなことを言うメビの頭を撫でた。


「さすがに一人占めはダメだ。稼ぎたいヤツはたくさんいるからな」


「まあ、仕方がないか」


「ありがとう」


 またメビを撫でて周辺の地図を記録したら湖に戻った。


「ホームで作戦を話し合ってくるよ」


「了解」


 ホームに入り、プランデットから得た映像をプリンターでプリントアウトさせた。


「プランデット、ほんと優秀」


 元の世界と技術は違うが、魔力波を電波に変えることもできたので、プリンターに合う波長にして情報を送っている。てか、ガーゲーでタブレットを造ってもらいたい。オレとしてはプランデットよりタブレットのほうが扱いやすいんだよな。


 プリントアウトしたものを中央ルームのホワイトボードに張りつけた。


「タカト、どうしたの?」


 張りつけたものを見ていたらミサロが入ってきた。


「リミット様からアナウンスが入った。やっと魔王軍が動き出したよ」


「あら、久しぶりね。いっぱいいるの?」


「全体で約十万匹って感じらしい。ただ、バデット肉ゴーレムが五十体くらいいたよ」


「ランティアックに現れたヤツね。倒せるの?」


「百体になっても問題はないな。ラダリオンや神託の騎士が全滅させられるよ」


 肉ゴーレムはそこまで俊敏でもなく、巨人のような筋肉もない。無力化させる方法などいくらでもある。が、マナ・イーターがあればより簡単に倒せるな。


「魔王軍にしたら立つ瀬がないわね。最終兵器でしょうに」


「まあ、魔王軍と言ってもいくつかある一軍が攻めてきたにすぎない。マガルスク王国は油断したのかもしれないが、一国を支配しようと考えた時点で敗北は目に見えていたさ」


 一国を攻めるのに一軍だけとかナメてんだろう、魔王軍は? まあ、ナメてたのはマガルスク王国のほうかもしれんが、一国を攻めるなどアホとしか思えない。魔王軍の動きを見ている限り、自滅に向かっているとしか思えないよ。


「これで山崎さんが楽になるといいんだがな」


 魔王と戦えるような人だが、まだ一国しか味方にできてない。組織戦をされたら分が悪いだろう。ゴブリンならいくらでもこちらに回してください、だ。


「あ、タカトさん。ゴブリンの動きが活発になってきました」


 ミリエルも事態が動き出したのでホームに入ってきた。


「リミット様からアナウンスが入った。魔王軍が動き出したようだ」


「やはりですか。いいタイミングで教えてくれますね、リミット様は」


 そう。どこかのダメ女神とは違って、余裕を持たせてくれるアナウンスなのだ。


「これは?」


 ホワイトボードに気がつくミリエル。


「ここに別のところからゴブリンを転移させる魔法陣があるそうだ。リミット様によれば十万匹まで増えるかもしれないそうだ」


「それはありがたいですね。まだまだ稼げそうです」


 ふふ。三億円以上の経済効果(?)が生まれる。狩り場としては優良だろうよ。


「そうなんだよな。ここをあとにするか先にするか、悩ましいところだ」


 魔王軍にいるゴブリンをすべてこちらに吐き出してからにするか、ゴブリン以外のものを転移させられる前に潰すか。本当に悩ましいところであった。


「そうですね。マガルスク王国には申し訳ありませんが、ここに集めてくれると定期的に稼げるようになるのでありがたいですからね」


「よし。ミーティングするか」


 雷牙とラダリオンが入ってきてないが、戦略ミーティングはオレとミリエルの担当。基本的戦略は先に決めておくとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る