第1069話 怪獣大決戦
「……ラダリオン、なのか……?」
捨てられたときから約二年。身長も肉づきあの頃とはまったく違う。オレもあの頃のラダリオンと今のラダリオンを比べたら他人としか思えないだろうよ。
「そうだよ」
ラダリオンに懐かしさや恨みなんか微塵もない。いつもの無表情で過去の人物たちを見ていた。
こいつのことだから顔すら覚えていないのかもしれないな。あの頃は空腹との戦いで、周りに目を向けることなんてできなかっただろうから。
「ラダリオン。タダオンにお前の実力を見せてやれ。タダオン。一切の加減はするな。殺す勢いで相手しろ」
死ぬ前に回復薬大を飲ませてやるから安心しろ。
完全にラダリオンが勝つ方向で見ているが、ラダリオンが負ける未来がまったく見えないのだから仕方がない。
「獲物はなんでもいいからな」
「わかった」
ラダリオンはマチェットを。タダオンは槍を使うようだ。
なぜ二人が戦わなくてはいけないかというと、ラダリオンに従わせるためだ。
マーダ族は強さ至上主義。強い者が率いることになっているそうだ。
長老も気弱な感じを漂わせてはいるが、二十年前はマーダ族最強の男だった、らしい。そんな強さ至上主義を従わせるには強さを見せつけるしかないんだよ。
「本気を出していいんだな?」
現在、最強の男がラダリオンから感じる強さがわかるのか、これまで見せたことがない顔になっていた。
「構わない。お前の全力でラダリオンと戦え。ラダリオンはオレの槍だ」
と、オレでもわかるくらいラダリオンのギアがトップまで上がったのがわかった。
「……わかった……」
タダオンもギアがトップまで上がったのがわかった。
怪獣大決戦並みの迫力だ。グロゴールとの戦いを経験してなかったら大洪水を起こしていただろうよ。
「始め!」
オレの合図で二人が動いた。
本当に巨人か? ってくらいのスピードを見せる。
マチェットと槍が何度も激突しているが、オレの動体視力では追いつけない。もう達人の粋だった。
「ラダリオンねーちゃん、また強くなったよね。ビシャでも勝てないかも」
メビには見えているようで、冷静に見ていた。
「もう少し下がるぞ」
さらにスピードが上がっており、火花が飛んでくるようになった。てか、あの激突でよくどちらも壊れないな。なんかオーラでも纏い始めたか?
なんて心配していたら双方の武器が粉々に砕けた。
だが、二人は止まらない。すぐに素手での殴り合い──いや、ラダリオンがボクシングみたいな動きをしてタダオンのパンチをすべて回避させていた。
ラダリオンは戦闘のスペシャリスト。銃の戦いから肉弾戦までこなす。素手になったからと言ってその強さは失われない。タダオンのパンチを一発も受けることなく懐に入り、腕をつかんだら綺麗な一本背負い投げをしてタダオンを大地に叩きつけた。
「勝負あり! ラダリオンの勝ちだ!」
そう宣言した。
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