第1067話 光の御子 *230000匹突破*
──ピローン!
え? アナウンス?
──二十三万匹を突破しました。魔王軍の約六割を駆除しました。
六割? え? 確か、最初の話だと六万匹とかじゃなかったっけ? なんだかんだと十万匹は駆除しているよね?
──魔王が援軍を送り始め、マガルスク王国でも数を増やしているようです。はっきりとした数字はわかりませんが、五万から六万匹はいるかと。援軍もかなりの数を送り込んでいるので十万匹を突破するかもしれません。
この世界、どんだけゴブリンがいんだよ! 生命のバランス狂い杉くんだろう! わざと知的生命体を滅ぼそうとしてんじゃないかと思うよ!
あの、マーダ族が放浪している理由を知ってますか?
ゴブリンはいい。十万匹は脅威だが、絶望的な数ではない。一国に押さえ込めた状態だ。時間をかけたら充分駆除できるだろうよ。
そんなことよりマーダ族だ。放浪する理由を知りたいんだよ。
──おそらく、ですが、光の御子を捜しているのだと思います。
光の御子? なんじゃそりゃ?
──わたしはマーダ族に関わっていないので確かな情報を持ち合わせてはいませんが、セフティーが駆除員に協力させるために一族の子を差し出させるために命じたのだと思います。本来は、光の御子を駆除員に差し出せ、だったのではないでしょうか?
やはりあのダメ女神が関わっていたか。なんかそんな予感はしてたんだよな……。
──まあ、光の御子はもういるんですけどね。タカトさんの側に。
え? オレの側に? だ、誰よ!?
──ラダリオンです。
はぁ? ラダリオン?
──あの頃、駆除員を送り込んでもすぐ死ぬ状況が続きました。そのとき、タカトさんと同じように巨人を味方につけ、四十万ものゴブリンを駆除しました。ただ、残念ながらゴブリン王が竜を味方につけてまして、二年と生きられませんでした。セフティーはそれに味を占めてマーダ族に駆除員に協力させたかったのでしょう。祝福と呪いをつけて。
最低限に言ってもクソな命令だな。
──マーダ族は五十人以下にはならず、百人を越えたら死病を発症します。今回も百人を越えたので半分を捨てるつもりだったのでしょう。偶然にもタカトさんと会ったので渡りに船だったと思います。
じゃ、じゃあ、ここは? マーダ族にとってなんなんです?
──ここは、神託の地、ですかね。そのときのマーダ族がセフティーの声を聞こうとして作ったのでしょう。まあ、一度たりとも答えたことはありませんが。
忘れているに一億円賭けてもいい。あのダメ女神は捨てた命などなんの価値もないと思っているだろうからな。
マーダ族を解放することはできますか? 駆除員の戦力としたいならオレがもらってもいいはずだ。
──では、族長に言っておきます。あと、この地点に転移魔法陣があります。潰さない限り、別大陸からゴブリンが送られてきます。
頭の中に座標が浮かび上がった。
──では、これからもゴブリン駆除をお願いします。
アナウンスが終わり、深いため息をついた。
放浪組は湖の側におり、石を集めて風呂を作っていた。
族長を目で捜すと、なにか落雷が落ちたように体を跳ねさせた。
リミット様なら問題ないだろうと落ち着いて見ていると、族長が周りに目を向け、自分を見ているオレに気がついたようだ。
遠くからでもわかるくらい真っ青になっている。脅したのかな?
ふらふらとよろけながらオレの前までやってくる族長。心臓止めないでね。
「…………」
なにか言おうとしているが、気持ちが空回りしているようで、口をパクパクさせるだけだった。
「なにも言わず女神からの神託を受け入れろ。オレが悪いようにしないし、長年の思いを成就させてやるから」
巨体を丸めておでこを地面につけさせた。DOGEZA!?
「タダオン! お前を神託騎士の長とする! 女神セフティーの名の下にオレにつけ!」
族長にだけしかリミット様は語りかけなかったようだが、族長の様子でなにかを察するしたようなタダオン。
「……女神セフティー……」
「そうだ。お前たちに神託を与え、光の御子をオレの下に寄越してくれた。マーダ族の未来はオレが責任を持って繁栄させよう。そして、マーダ族は今日を持って解散させる。このときよりお前たちはセフティーブレットの一員だ」
あのダメ女神のことだ、祝福も呪いもそこまで厳しいものじゃない。だったらマーダ村の者はとっくに死んでいるはず。きっとマーダ族から抜けたら祝福も呪いもなくなるはずだ。
「族長! いや、お前はもう族長ではない。引退し、長老として巨人の王国を創るのに尽力しろ。新たな時代がこの地より始まる!」
「ご、ご命令のままに……」
「ご命令のままに」
長老がさらに地面におでこをつけ、タダオンは騎士らしく片膝を地面につけてオレに頭を下げた。
請負員カードを発行。タダオンたちに配って請負員とした。
「この地にいるゴブリンをすべで駆除する! マスターが命じる。神託の騎士として名誉を見せろ!」
タダオンたちが立ち上がり、剣を抜いて天に向けた。
「マスターの命令のままに!」
タダオンの叫びに残りの者たちも叫んだ。
ほんと、あのダメ女神は面倒なことをばかりしてくれるぜ……。
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