第3話役人登場



ある日。


呉楚ごそ七国の1つ呉服ごふくから役人がやって来た。

なんでも、ここって呉服国が支配している土地なんだよね。


そして俺のことを聞いてやって来たらしい。


「それがしは、呉楚七国の呉服より来たわんだ」


「呉服って何・・・もしかして服屋さん・・・嫌。違うな・・・それで何か用事でもあるのかな・・・」


「信と申す者よ、言葉づかいがなってないぞ・・・それがしは、役人ぞ」


ああ、タメ口はダメらしい・・・


「異国から来た者なので・・・あまり言葉を知りませんので、申し訳ありません」


「それなら仕方ない・・・呉服へ来てもらいたい」


「嫌と言ったらダメですか・・・」


ああ、嫌そうな顔されたよ。

補佐する役人が俺に近づき色々説明を受けた。


呉楚七国って呉楚が直系で東呉とうご呉音ごおん呉服ごふく呉綾ごりょう孫呉そんご呉鉄ごてつは、徳川御三家みたいなものらしい。

まあ家族経営の大企業と考えればいいだろう。


そして呉楚七国は、大陸の南地方の大国になる。

その上のれい国は北西地方を支配。

めい国は北東地を方支配。


その3国が大陸を分割していて、今のところは争いは無い。

100年前には、あったらしい。

その恨みを持つ者もいるかも・・・



その呉服は、呉俊宇ごしゅんゆーが天子らしい。


天子って国王って意味だって。


なんでも呉俊宇は、呉楚の天子の弟らしい。

呉俊宇は、野望に満ちた人物だと補佐の役人が言ってた。



呉服は、呉綾から布類(綿、絹)を仕入れて染めや服を作って販売してる。

それが名の由来らしい。


各国から物を仕入れて各国へ運ぶ貿易の拠点で、位置も中央にあって6つの国と繋がっている。


偉い順なら呉楚が1位で、2位が呉服。




王の後ろには、兵士や役人補佐が合わせて20人も・・・


ああ、服のセンスはダメダメだ。

色も薄い緑色でダサ過ぎる。

兵士は、無地で薄汚れている感じで、武器の槍を持ってなかったホームレスだよ。

それって洗ってる。


それで服を染めて売ってるのか・・・なげかわしい。

染め具合から草木染かも・・・

あれ!・・・もしかして染めや織りの技術に服装デザインも遅れているのかも・・・


これってチャンスだ。



「信よ、それで返事は・・・」


あああ、忘れてた。

断っても俺には、情報が少な過ぎて判断の仕様が無い。

あの老人の記憶では、国を相手に戦っても負けない実力らしい。

300年前に国と戦って滅ぼしたこともあるらしい。


どんだけ凄い老人なんだ。


それなのに1人で死んでしまうなんて・・・寂しい人生だよ。

そんな人生は俺は嫌だ。


貿易拠点なら色々な情報もあるだろう。


「分かりました・・・行きます・・・」




そんな時だ。

レディーが目覚めて裏庭からやって来た。


「なんと1段の魔物が紛れ込んでいるぞ。赤熊を殺せ!」


「王様、我々では無理です。御存知ないかも知れませんが100人以上で戦っても勝てると言い切れません」


「なんと、それ程の魔物なのか!」


「大丈夫ですよ・・・危害を加えたりしなければおとなしいので・・・」


レディーの頭をナデナデして可愛がる。


「ニャーニュー」と猫みたいに鳴くレディー。


「そ・・・それでは、明日の朝に迎えに来るから用意するように・・・」


逃げるように帰ったよ。





事件が起きたのは、夜中だった。


俺の所に街役を補佐していた村人が駆け込んできた。


「大変です!街役が役人に捕まって仙丸の作り方を聞きだそうとしてます」


「もっと情報はないのか・・・」


「宿の主人の話だと拷問をしてるようで・・・指の1本が折られたと」


「お前らは、ここで大人しく待ってろ」




天武神魂てんぶしんこんで空を飛ぶなんて簡単だ。

宿の屋根に静かにおりた。


天武神魂で亜空間みたいに黒渦から物を取り出す。

取り出した物は、報球ほうきゅうだ。

老人が他の武術を研究するために作ったらしい。



屋根の一部を音をださないよう壊す。

そして報球で部屋内を撮り続ける。


ああ、王はべらべら拷問理由を喋ってるぞ。


「それがしは、仙丸の製造方法でのし上がってみせる。それには賄賂が必要なんだ・・・金だよ金、分かるか爺さんよ」


「これは神仙様からいただいた秘法です。わたしの一存では話せません」


「なんと強情な爺さんだ。死にたいのか!」


そこで俺は飛び降りた。


「お前は!」


王の心臓に近いツボを「サッ」と突いた。

「ガクッ」と崩れ落ちる。



「李さん、大丈夫か・・・」


「指が・・・折れて」


仕方ない・・・天武神魂でちゃちゃと治す。

注入しなければ大丈夫な秘術だったよ。


「え!指が・・・ありがとう御座います」


李さんを連れて部屋を出る。

案の定、補佐の役人が「賊だ!賊が現れたぞ!!」


ああ、廊下に人が・・・


「よく見ろ!王の悪事を!」


壁に向かって映し出す。


部屋で喋った内容が再現された。


「これで分かったか!誰が悪なのか・・・お前らの中で偉いのは誰だ」


「わたしだ」


「王を逮捕して国に戻れば、出世も間違いないぞ。それでも俺と戦う気か・・・外を見ろ!あの大熊が待ってるぞ」


慌てて兵士が木窓を開けて見る。


「本当に大熊がいるぞ!」


「分かった・・・私達も死にたくない。皆はどうだ」


「死にたくない」


「こんな所で死んでたまるか・・・奴が賄賂をせびってるのを見たぞ」


「王も気に入らないから捕まっても関係ない。聞いた話だと若い娘をさらったと・・・」


「それなら知っているぞ」


おいおい、悪行がボロボロと出るわ出るわ。

王は、終わったな。


ツボを突いて目覚めさせた。

グルグル巻きにされながら文句を言っても、もう遅いよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る