魔族軍団長ミレルバの焦り

『なんだと!スグルが行方不明だと!』

『どうもおかしい┅┅偵察からこっちに向かってた王国の勇者軍が引き返したそうだ

これはスグルが行方不明になった事と連動してるぞ』

『では王国の誰かがスグルを拐ったと言う事か┅┅まさか転移┅』

『ああそのまさかだ、部下の知らせで消えたと言うのがあった┅』


『転移魔法を自由に操る者が王国にいると┅┅それは不味い!

不味いぞザルド!』

『もし転移魔法で攻められたら戦況はひっくり返るな┅

勇者の誰かなのか?』

『召還された勇者は6人┅

勇者、賢者、巫女、聖女に大魔道師と拳聖だったな┅┅

転移魔法なら大魔道師か賢者なら可能なのか?』


『┅┅大魔道師が臭いな┅

異界の者は特別なレアスキルとギフトが与えられると聞く

転移魔法と言う失われた魔法が使えても不思議では無いぞ』

『やはり情報不足が仇となったな、聖剣にしても聖剣召還なんて知らなかったからな┅』


『事を急くと失敗するやも知れんな┅もっとシャルタンへ偵察と間諜を送るが良いと思うぞ』

『他の魔王軍はどうする?アイツ等は気が短いぞ┅┅』

『魔人の糞が!しかし力は向こうが上だ┅┅頭は無いがな』

『どうせ快楽に浸るだけのクズだ!ヒト族の女をあてがい納得させるか┅』

『丁度帝国の妃や姫を捕らえてる、あれを与え時間を作れば良かろう、ヒト族の女に目が無い連中だ、それも貴族や王族なら骨の髄までしゃぶるだろうからな!フフフ』


魔王軍第3部隊の将は魔王4将軍の1人ダブラム、魔王軍幹部で一番冷酷残忍な魔人として恐れられる

そしてヒト族の女子供を喰らうのが趣味と言う化物だ


『グフフ┅これが帝国の姫か?柔らかな肉だ┅┅ジュル┅

それに犯しがいもある┅ククク

その怯える顔!恐怖の叫び!ソソルぞ!もっと叫べ!もっと痛がれ!そして俺のコイツを悦ばせろ!グフフ!ガハハハ!』


ダブラムは帝国第2王女の足を掴み広げ勢り立った自身のアレを突き立てる!┅┅ギャァァアア!

姫の悲鳴に歓喜しながら腰を振るのだった┅┅


帝国全土を蹂躙しつくした魔族軍と魔王軍は帝都で次の行動を待っている

シャルタンへ攻めるには転移での移動しかなかったからだ

アーティファクトでの転移だがこれは魔国城の宝物庫に眠っていた品で最大1万の兵を転送出来る

これは魔国最大の武器でもあった


『スグルを失ったのは痛いがアーティファクトが使える

一気にシャルタンを落とせば魔王様も我等魔族をお守り下さる』

『フッ┅お嬢よ?ソナタは魔王様をえらく信用してるのだな?

俺としてはそれが不思議だぞ?

あのお方は既に闇に堕ちた化物だ、我等の事など虫けらとしか思って無いのだ、それを┅』


『馬鹿を言うな!魔王様は選ばれしお方なのだ!あの邪神様が選び化身として現れ今や魔王様は神なのだ!それを馬鹿にするのか!』

『お嬢がそれで良いなら仕方ない┅┅しかしあのお方は心や気持ちなど持ち合わせてはおらんぞ

ひたすら破壊する事と蹂躙しかせぬ!我等魔族の未来など最早無いと思え!』

『そんな!そんな事は┅┅まさか?』


このザルドが正しい認識だろう

ミレルバの思いは世間知らずの妄想でしか無い

魔王は欠片に依って汚染された魔物でしか無いと言うのに┅

そしてその魔物から生み出された魔人は最低の魔物と言える

本能優先の魔物、ゴブリンと大差ないのだ

しかし力は強く考える頭を持つ

実に厄介な魔物と言える



『ミレルバ様!魔王軍より幹部会が行われる通知が来ました!』

『これか┅┅あい判った!下がれ!』『ははぁ!』


『幹部会とな?全幹部が揃うのか?この帝都にか?何故?』


魔王軍幹部4将と魔族軍全団長が集まる幹部会

余程の事が無い限り全員参加はなかったのだ

そう!魔王復活の時に1度だけ行われたのが最初で最後

それがこれから行われるとは?


『筆頭幹部のシャムラだ!私が仕切るとするぞ!魔王様の決断が下された!

いよいよシャルタン王国へ進軍する!』ウオーォォオ!


『シャルタンには勇者が控えておる!これ迄とは違った戦いとなるだろう!

特に魔族軍は容易に攻める事は難しいと言える!

勇者の力は強大だ!それに隠された力もある、それでだ!

魔王様が仰るには魔族軍には先陣を切って王都へ攻めろと言われた!それも全軍だ!』

『おい!それでは魔族軍は勇者の餌になるだろう!

それで勝てるのか?なぁシャムラよ?おめぇ魔王様に媚び売って手柄を横取りか?ハン!』


『愚かな!ゲスの勘繰りは辞めろバレグリダ!お前はそうさな?王都ではなくオーストンを落とせ!』 バァァアアーン!

『ふざけるな!そのなんだチンケな町は!我が行かずとも魔族軍の小隊で落とせるは!』


『フッ!物を知らんとは愚かな!オーストンと言うのは最近建国した国だぞ?それも最先端の技術を持つ国だ

それにあの国の軍はシャルタンの軍とは比べようも無い程強いと聞く、お前ごときが敵う相手では無いぞ?ククク』


『なんだと!そんな国が!

うう!くそっ!そんなに強いなら楽しみだな!では我等は先んじてそのオーストンとやらへ出向こうぞ!』


筆頭将軍 シャムラ

将軍第2位 ジャムグラム

将軍第3位 バレグリダ

将軍第4位 イルグルム


第3位のバレグリダはオーストンへと向かったが残った第2位のジャムグラムは王都へ

第4位のイルグルムはシャルトン公爵領へ

筆頭将軍のシャムラはジャムグラムに付き添うようだ


魔族軍は5つの団が構成されていて、ミレルバは第2団長で団員は500名を擁する


『お嬢よ┅俺はこの戦いに疑問を持ってるんだがな┅

何故総員で王都を攻めないんだ?勇者が待ち構えてるんだぞ?

公爵領地とか新しい国とか軍をバラすのは府に堕ちねぇ┅』

『それは┅シャムラ様の考えでは無くて魔王様の指示だと思うぞ

そう言ってたでは無いか』

『それは魔族軍の事だ、どうもシャムラ殿は他の将軍達を信じて無いと見えるんだ

特にバレグリダ殿をだ┅』


『我等はそのバレグリダ様と向かうのだぞ?』

『ああそうだ、勇者スグルを失なった失態を負わされてだと思う

こりゃもしかしたら我等第2団は全滅するやも知れんな┅』


『何故そう思う?』

『バレグリダ殿は頭が弱い、何時も突っ込むだけの戦闘で芸が無い、もし相手が切れ者ならば容易く打ち負かすだろう』

『では我等はバレグリダ様の指示に従わず独自に戦うと?』

『それが良い、どうせあのお方は馬鹿の1つ覚えで全軍突撃しか命令しないだろう

そこを上手く交わして行動すれば勝機はある』

『うん!そうしよう!』


帝都の城庭から次々に転移陣から各地へ飛ぶ軍団達

そしてミレルバ達もバレグリダ率いる軍でオーストンへと転移するのだった┅┅


―――――――◇―◇―◇―◇


sideシャルタン王都近郊アートン町


巨大な魔法陣が描かれた地面┅

しかし何故か宙に浮いてる?

これは俺が探査マップで見つけたんだが狙い通りにここアートン町近くの平原に転移陣が設けられてた


その陣の真下に深い穴を土魔法で掘り転移して来たもの達を落とす算段だ

周りに騎士団を配置して転移が終われば陣を壊す計画

そして始まる惨劇┅┅

俺は魔族達を殺したく無いんだ、彼等は瘴気で自分を失くしてるだけだからなぁ


でも魔人は絶滅せねばならない、アイツ等は所詮魔物

亜人の魔族とは全然違うし生かしても何の徳も無い


今回は情報をフルに使ったんだ

シルファ達精霊達と妖精達、そして俺が新たに創設した隠密部隊

この方法で大抵の事を知る事が出来るし要らぬ事まで知る事になる


精霊に妖精ってお茶目さんだから下世話な事も教えてくれる┅

因みにシャルタン王はカツラで本当はツルツルらしい┅

奥方の王妃は演劇俳優のイケメンと浮気してるとか┅

シャルトン公爵は大の甘党で毎日プリンが食べれないと癇癪を興すとか┅


どうでも良い事まで知らせてくる

頭の片隅に取っては要るが┅┅


ウワァァァァアア!助けて!


穴に響く悲鳴と叫び┅┅

それを黙って冷や汗タラタラの王国騎士団員達

魔法陣が光る度に悲鳴と叫びがこだます┅┅

どうやら魔王軍幹部の姿はなかった



―――――◇◇――◇◇――◇◇


sideシャルトン公爵領地



シャルトン公爵領地でも待ち構えてた公爵騎士団が次々に陣へ向かって槍と矢を放つ

突然の攻撃に何も出来ず死に行く魔族軍達┅┅

最後に現れたイルグルム将軍にも矢の嵐と槍が突き刺さる


『シャムラは俺達を騙したのか┅それとも排除したかったのか┅

無念┅┅』


公爵領地は戦いとは程遠い争いで幕を閉じた



――――――◇―――◇――◇―

side オーストン国



「リアナ?本当に先陣で行くのか?」

「ええ!私が行くわよ!」

「ウフフ♪私もよ!」

「ビアンカ┅┅絶対に無理しないで!ケガしたら直ぐに後退するんだ!絶対だよ!」

「ライトは心配性ね?私が魔人に負けるとでも?」

「そうよ!魔人ゴトキチャチャッと始末するわよ」

「はぁ~困った嫁さん達だ┅」


何故こうも張り切るのか?それは冗談で言った一言┅┅

〖なにがしか戦功を与えないと駄目なんだよな┅〗


そう!戦功!それを欲しがり張り切ってるんだが┅

いったい何を欲しがってる?

わからん!くそっ!


但し!魔族の者をなるべく殺さず捕らえる事にした

これは護衛団にも徹底して貰う

魔人は殲滅で魔族は捕虜と言うか獲得する事にしてる


現れる場所は特定出来てるから簡単だ

森の奥に魔法陣を見つけてるよ

あのアーティファクトは設置タイプだから直ぐに見つかったんだ

そして現れる魔族軍┅┅可哀想


あれ?リアナが動かないぞ?

そして左右から護衛団が挟み撃ち

と言うか投げ縄で捕らえて行く

バタバタと捕らえられ倒れる魔族軍は足を取られ進めない

その後ろから大きな体が出て来た

魔王軍と将軍バレグリダだ

するとリアナが飛び出した!

大将と一騎討ちだ!


『クク┅お笑い草だな、待ち構えられるとはな┅そして我の相手が小娘とは舐められたものだ』

「小娘で悪かったわね!でもアナタでは私の相手にならないわよ」

『身の程を知れ小娘!なぁに後で可愛がってやる!骨の髄までな』


激しく撃ち合う剣擊!火花が散り目に見えぬ速さで撃ち合う

力の差でどうしても打ち負けるのはリアナの方だ、しかし彼女は瞬間移動で背中を切り裂く!


『ググッ!馬鹿な!後ろだと!見えなかったぞ!このぉ!』

「フフフ!私の攻撃が見えないなんて小物ね」


次は首を狙うがかすめただけ

ジリジリと追い込まれるバレグリダ!

そしてリアナは正面に現れ首を切り落とした

ゆっくりとバレグリダの首が落ちる、意識は目で見えてるのかリアナの綺麗な微笑みに驚いた表情で死んで行ったバレグリダ


ドカーン! ドーン!


「魔王軍って大した事が無いのね?私の初級魔法で手も足も出ないとは!ウフフ!」


ビアンカが次々に魔法を放つ先は魔王軍だ

ファイヤーボールやファイヤーアローにファイヤーランスと火魔法を打ち込む!

もう!森が焼けると言うのに!


そして次はウォーターボールでウォーターカッターを放つ!

魔人の体が切り刻まれ死体の山となる

無詠唱で練度の高い魔法が次々に来るから反撃の時が無い魔王軍


『お嬢!不味い!先を読まれてるぞ!それにバレグリダも殺られた!一旦放れたが良い!』

『ええ!でもどうしてこうなった┅┅』


飛行で放れようと飛ぶミレルバとザルド、だがその前に浮かぶヒト族!


「逃がしはしないよ」

『うぬ?ヒト族で飛行魔法を使える者がいたとは』

『コヤツ!強いぞ!』

「ねぇ?降参しない?痛いとか嫌だろ?」

『惚けた奴ね!降参なんて誰がするもんですか!それより命を粗末にしない方が良いわよ』

「魔族軍第2団長のミレルバさんだね?そしてご意見番のザルド将軍、2人には聞きたい事があるんだ」


『ザルドが将軍だと知ってるのか!それは秘密だぞ!何故知ってる!』

「公爵令嬢のミレルバ嬢だからお守り役としているんだろ?

馬鹿スグルが惚れる程の美人さんだしな

簡単に魔人に嫁として出したく無いのは親の気持ちだろう

だからご意見番が将軍ザルドさんなんだろ?」

『ガッハハ!統べて知られてると言う事か、お嬢よ?もう降参したが良い、彼には敵わん』

『ザルド!お前まで!いいや!私が勝つ!こんな腑抜けに負ける訳が無い!』


ミレルバは剣を抜き速い速度で突進して来た┅┅┅悪手だよ


その剣を持つ手を掴み拳で腹を殴る!┅┅グハッ!

一発で気を失った┅┅


『このザルドの首でお嬢┅ミレルバ団長の命は取らんと約束して欲しい』

「イヤイヤ!そんな首は要らないので!とにかく降参で良いんだな?」

『ああそれしか無かろう┅しかしソナタは何者だ?シャルタン王国に化物の存在は確認してないが?』

「なんだよヒトを化物呼ばわりか?俺はラインハルトだよ

このオーストン国の領主をしてる、ライトと呼んでくれ」

『ラインハルト┅┅ライト殿だな┅しかし全然知らぬ事ばかりだ』

「出来立ての国だからな、それにシャルタン王国から消された領地だ、フローデル王国とエルフ国くらいしか知らないと思うぞ」

『国から消された?なんと┅┅』


オーストンの城壁前の草原に大きなテントが張られそこが捕虜収容所となってる

生きて捕らえた魔族軍はおよそ200名、まだ散らばって敗走してるのも見受けられる

だが魔人は統べて殲滅命令が下りてる

リアナにビアンカそれと護衛団で魔王軍の1部隊は完全に消滅した


『うう┅うっ!痛い┅』

「もう!ライトは女の子なんだから手加減とかしなさいよ!

これを飲んで」

『心配無いぞお嬢、我等は命を助けられた側だ、そのポーションを飲めば楽になる』

『┅┅┅┅ザルド?』


「えー!魔族の皆さん!これからアナタ達に魔王の瘴気を浄化します!そのままで良いから!

では浄化します!」


〖セントスピクチュア!〗


テント内に広がる虹色の霧

その霧がキラキラと輝き魔族達に降り注ぐ

そして全員が淡く白く光る様は不思議な光景だった


「これでアナタ達は邪神の瘴気に含まれた呪いから解放されました!以前のアナタ達に戻ったのです!」


俺は何をしてたんだ?

私はなんで剣を?

やっと解放されたのか!

ああ!この気持ち!


口々に解放を喜ぶ声や後悔を口にする者達と様々、そして彼女は?


『私は┅┅』『フフフ!アハハ』


『覚えてるわ!あの厭な霧を吸ったら┅┅なに!この格好!いやぁー!』

『ガッハハ!お嬢!色っぽくてよいでは無いか!アハハ!』

「上手く行きました、魔族の方々とは戦いたく無かったので捕縛に専念しました」

『これは国王様!ありがとう!あの魔王に呪われ好き勝手を許した我等魔族を許して下され

このお嬢は公爵令嬢でしてな?お転婆だが礼節はわきまえております』


『ザルド?このお方が国王様とは?』

『何を寝ぼけておる、オーストン国を攻めに来たでは無いか?

まだ思い出さんか?』

『┅┅あっ!そうだ!確かにオーストンと言う所に軍を率いた┅┅はぁ┅思い出したわ┅』

「ミレルバさん?貴女のその衣装は着替えたが良いでしょうね?

まぁ眼福ですが┅」


『ガハハ!王様もすみに置けんな?お嬢はこれでも20歳だ

それに稀に見る器量良しもし良かったら嫁さんとか駄目か?』


『ザルド!何を言ってるの!恥ずかしいじゃないの!この馬鹿!』

「はぁ?嫁は2人いますので┅でも着替えは必要でしょう」

『ハイ┅お願い┅します┅』


うっ!真っ赤になってモジモジって!可愛いじゃないか!

それに反則だよそのスタイル!

パツパツの革服で丸見え!

形の良いおっぱいはEカップ確定!ウエストはギュッと締まり豊かな桃尻!たまりましぇん!

そして顔が!なんて可愛らしく綺麗!魔族特有の角が髪に隠れてる

短いんだな┅┅

確かに器量良しって言うか超綺麗だろ!


スグルもムッツリだから相当抱えてた筈だよこりゃ┅┅

そりゃ国を捨てても良いよなぁ~


「ミレルバさんはこちらに、ライトは執務室でお話があります!」



えっ?なに?その顔が怖いんですけど?リアナさん?ビアンカさん?何か不味った?


ええー?説教は勘弁してよぉ~!



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