9.


しきりに携帯端末を弄ったり、立ち上がっては行ったり来たりしていると、松下に「どうされましたか」と声を掛けられた。


ここは自身が代表を務める製薬会社の社長室。

妙な動きをしている御月堂にそう声を掛けざるを得なかったのだろう。御月堂自身も自身の行動を他人に言われて、ハッと我に返った。


「いや⋯⋯こないだの病院に何か報告は来なかったか」

「こないだの⋯⋯? ⋯⋯ああ、あの病院でしたら、私の間違いではありませんでしたら、確か社長に報告書をお渡ししたはずですが」


そうだったか、と座り直した御月堂は机の上にあった書類を探ると、確かにこないだの病院名と薬の効果が記載された書類が見つかった。


「⋯⋯私の見間違いだったようだ」

「左様でございますか」


笑みを含んだ顔をした松下はそう言った後、部屋に並ぶ本棚に向かった。

何しているんだと頭を抱え、小さく息を吐いた御月堂は、そのままその書類を目で読んでいた。


「社長、立場上休むのは難しいかと思いますが、少し休まれた方がよろしいかと思います」

「⋯⋯ああ」

「それとも御月堂様。私が提案しましたクリスマスプレゼントが姫宮様と大河様に喜ばれたかと心配で落ち着かないですか?」

「ああ、そう──」


バッと顔を上げると、こちらを見ていた松下がにこりと笑った。


「やはりそうでしたか。そうですかそうですか、あの御月堂様がそのようなことで落ち着かなさそうにするとは。長らく貴方のことを見てきましたが、変わりましたね」


楽しげに声を弾ませ、されど面白いと言いたげに言う松下に「何が言いたい」と声を怒らせた。

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