第11話 女神教に起こった事とは!
キョマラさんの案内で僕たちは歩いていた。一時間ほど歩くと遂に森を抜けたんだけど、まだ三十分ほど歩くのでとキョマラさんが言って、そこで小休憩をとることに。
「
キョマラさんにそう聞かれるけれど、僕たちは既にレベル200も越えているからこの程度で疲れたりはしない。それにしても、キョマラさんたちはどうやってこちら側に来れたんだろう?
魔獣の森をこれまで抜けた人は居ないって商業ギルドのラーエさんから聞いてたけど、キョマラさんたちは実際にここに居るしね。
「大丈夫ですよ。それよりもキョマラさんたちは魔獣の森をどうやって抜けてこちら側に来られたんですか? 僕たちが聞いたのは誰も抜けた事が無いって話だったんですけど」
ホントは村に着いてから聞いても良かったんだけど、早く知りたくて質問してしまった。
「ああ、なるほど。今はそうですね。私たちがこちら側にやって来たのは今から八十年ほど前になります。詳細は村に着いてからお話させていただきますが、その頃はこの森は魔獣など居なかったのですよ。全てはあちら側にある国々の所為なのです」
キョマラさんはそう言うと「それでは先に進みましょうか」と言って立ち上がり、村へと進む事になったんだ。
聞いてた通り三十分で村に到着した僕たち。木の柵で囲われた村には現在は老若男女合わせて百十二人が住んでるんだとか。
家も丸太を組み合わせた簡素なもので、森からも近いので魔獣がやって来たら直ぐに壊されそうだと思ったよ。
「多少は私の家が広いのでご案内します。こちらです」
キョマラさんと一緒に来てた人たちには解散を言い渡して僕たちはキョマラさんの家に行く事になった。そこでこの村の成り立ちについてなどの話をしてくれるそうだ。
キョマラさんの家に着いたけど、確かに他の家よりは大きいけれども、僕たち六人が中に入ると手狭に感じられるぐらいの広さだった。
「おーい、ホトカゲ。戻ったよ。今日は素晴らしい出会いがあったんだ。何とセクサローネ様の
「まあ! セクサローネ様の神子様でいらっしゃいますか!? 私はキョマラの妻でホトカゲと申します。どうぞ、むさ苦しい所でございますがごゆっくりとお寛ぎください」
キョマラさんの奥さんのホトカゲさんは僕たちの目には二十代後半のキレイな女性だったけど、さっきキョマラさんがこちら側に来たのは八十年前だって言ってたよね。つまり見た目よりもかなり年上なんだと推測したんだ。
「有難うございます。お世話になります」
僕が代表してそう挨拶をすると、「お茶を淹れてきますね」とホトカゲさんは奥に行った。
「さあ、こちらにお座りください。神子様がた」
キョマラさんに勧められて僕たちは椅子に座る。椅子が六脚しかないからシーヤが立ったままでって言ったんだけどキョマラさんが奥から新たに椅子を二脚もって来たから問題は解決した。
「さて、先ずは私たちの事からお話させていただきます……」
そう言ってキョマラさんは話し始めたんだ。
「先ほども少し申し上げましたが、私たちがこの地にやって来たのは八十年前になります。お気づきかと思いますが、私たちはヒト属ではありますが人種ではありません。私はオーガと人との間に生まれた者で、妻のホトカゲは人とナーガとの間に生まれました。今から百年前まではそうした異種族間での婚姻は当たり前でございました。女神セクサローネ様からの祝福により、私たちのような異種族間の子同士でも普通に一緒になりまぐわいを交わせば子供も普通に生まれてきていたのです…… しかし、今から九十八年前に当時のパイプカット王国の王がヒト属絶対主義を掲げ、女神セクサローネ様を主神と仰ぐ女神教を邪教と認定しました。その際に秩序の神とやらを主神と仰ぐオーダー教を国教として定め、そして人知れず勇者召喚を行っていたのです…… そして勇者たちを扇動して私たち女神教の者たちを迫害、いえ殺害し始めたのです……」
今から九十八年も前に今回と同じように勇者召喚が行われていたと聞いて僕たちは驚いた。そして勇者たちによる殺戮が行われた事にも……
「そんなに前から勇者召喚とは行われていたんですか?」
ショーコが驚きながらも質問すると
「いえ、その時が初めてだと思います。それまでは女神セクサローネ様のお力で異世界へと繋ぐ門は開かれる事は無かったので」
キョマラさんはそう教えてくれたよ。あのセクサローネ様がそんな風にしてたなんて、お会いした時の軽薄な感じからはちょっと信じられないけど、キョマラさんが嘘を吐いてるようには見えないからホントなんだろうね。
「そうなんですね。もう一つ教えてください。その時の勇者は私たちぐらいの年齢でしたか?」
ショーコのもう一つの質問にもキョマラさんはちゃんと答えてくれる。
「実際は勇者召喚は百年前に行われて、私たち女神教の者たちに襲いかかって来た時には既に召喚から二年の月日が経っていたと今は分かっております。なので、それから考えますと確かに召喚された時には神子様たちと同じ年頃であったかと思います」
その言葉に僕たちは頷いた。どうやら百年前に召喚された人たちはパイプカット王国の当時の王族たちの口車に乗せられて女神教の信者の人たちを襲ったんだろうね。
その当時の勇者たちが地球のいつの時代の人たちなのかは分からないけれども、予想だと僕たちのように異世界転生や異世界転移の物語を知らない世代の人たちなんだろうと思う。
そうなると今回の召喚はどういう事なんだろうか? セフレ王女は相手は魔族って言ってたけれども。
「私の私見を述べさせて貰いますとパイプカット王国は世界を全て自分たちの王国の物にしようと企んでおるのだと思います。私たち女神教の信者はこの村にいる者だけですから魔族と呼ばれるのは他におりません。が、恐らくはまた言葉巧みに皆様のご友人たちを騙して他の国を侵略していくつもりなのでしょう。パイプカット王国ではヒト属絶対主義を掲げています。なのであの国では人種しかおりません。しかし他の国では人種ではない種族もおります。今回はそれらの国を魔族の国だと偽るつもりなのでしょう……」
キョマラさんの言葉に僕たちは唖然としてしまう。そんな事の為に僕たちを召喚したのかとパイプカット王国には怒りを覚えるよ。
「さて、話の続きでございますが私たち生き残りは安住の地を求めて森へと入りました。その当時はまだこの森は危険な野生動物はおりましたが魔獣は居なかったので、私たちでも通り抜ける事が出来たのです。もちろん、追手もございました。その追手に仲間たちが何人も殺されましたが、ある日を境に追手が来なくなりました。そのある日とはこの森に魔獣が誕生した日なのです。幸い私たちは先ほど神子様たちと出会った辺りまで来ておりましたので魔獣の被害はありませんでした。が、追手の者たちは魔獣により殺されたようなのです。そこでパイプカット王国は召喚した勇者を森へと投入したようなのですが、勇者たちでもこの森を抜けることは出来なかったのでしょう。私たちの元に来ることは無かったのです。この森に魔獣が突然発生した原因はパイプカット王国が勇者召喚を行った事により、時空がひずみ、異空間に溜まっていた
キョマラさんの話により僕たちはこの森に何が起こり、女神教の人たちがここに住んでいる理由を知ったんだけど……
「あの、キョマラさん。勇者召喚によりその
僕の質問にキョマラさんは頷いた。
「はい、起こり得ると思っております。何処に降り注ぐかは分かりませんが……」
その答えに僕たちは何も言えずに考え込むのだった。
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