第7話 第三の村で問題起こる!
それからも乗合馬車に乗って移動する僕たち。あの商業ギルドの関係者だと思しきお兄さんは第二の街で馬車から降りて、そのままその街に残ったようだ。
シーヤの見立てでは、どうやら僕たちが本当にヒーニンゴム神聖国に向かうと見て、神聖国のギルドに連絡を入れたんじゃないかと言う。
「それで俺たちがヒーニンゴム神聖国に着いたら、向こうの商業ギルドの関係者が俺たちの監視を始めるんだと思うぞ」
多分だけどシーヤの見立てが合ってるんだろうね。まあ、僕たちはヒーニンゴム神聖国には行かないから、勝手に予想して居なくなってくれたのにはホッとしたよ。
で、今は第三の村に向かってる途中なんだけど、そこは村だから宿屋は一軒しか無いんだって。なので問題のオジサンもその宿屋に泊まるんだと思う。僕たちは宿の中でも警戒する事になるから、今回は女子たちにも同じ部屋に泊まるように話をしたんだ。六人が一緒にいればあのオジサンも
問題は村の宿屋にそんな大部屋があるのかどうかという事だね。まあそれは行ってみないと分からないからしょうがないよね。最悪は外で野営する手もあるしね。
冒険者用の広場というのが小さな村にもあるらしいから、そこでならテントを張って野営も出来るんだって聞いているからね。
そうして考えてる間に第三の村に着いたんだけど、村の宿屋にはやっぱり六人が泊まれる部屋は無いって言われたから僕たちは広場で野営する事に。
あのオジサンは宿屋に泊まるようだ。
僕たちは広場の場所を聞いて移動する。広場は村外れの方にあり複数の冒険者たちがテントを張っていた。
「ジータ、気づいてると思うけど宿屋で僕たちが広場に泊まるって言った時にあのオジサンがニヤッと笑ってたよね。だからここでは最大限の警戒が必要だと思うんだ」
ショーキが僕にそう言うから僕は頷いた。
「うん、気づいてたよ。だからテントを張る場所を考えてたんだ。最悪はテントは放置して逃げ出せるように場所を選ぼうよ」
僕の言葉にシーヤが
「それじゃ、あの藪の前にしよう。それからテントの裏を切っておいて裏側の藪を人が通れるぐらいに広げておこう。それで何か起こる前に逃げ出そう」
そう言って場所を指さした。その場所は藪の前で六人用の大きなテントを張っていたら一人が裏で藪を広げていてもバレないだろうから僕たちは頷いてその場所にテントを張る事にしたんだ。
僕とシーヤと女子三人で大きめのテントを出して張っている間にショーキが藪を広げてくれた。
テントを張りながら女子たちに僕は言う。
「もうこの村で馬車から離れようと思ってるんだ。進路を南に変えて魔獣の森を目指そうと思う。そしたら商業ギルドの追手も躱せるし、あの変なオジサンの相手もしなくてすむから」
「うん、そうしよう。それからみんなのレベルアップをゆっくりやって行こうね」
セーナが賛成してくれてショーコとタマキも頷いてくれた。僕たちは何か起こる前に行動を起こす事にした。
テントを張り終えて藪側を切り裂いておく。深夜になり僕たちはテントから出て広げていた藪を抜けて広場から出た。
そしたらまだ広場の声が聞こえる場所から悪態が聞こえる。
「クソッ、あのガキ共が居ないぞ!!」
「オイ見ろ! テントのこっち側を切ってやがる!」
「追うぞ! まだそう遠くまで行って無いはずだ!」
「急ごう。時間稼ぎはしてあるから、慌てずに落ち着いて行こうね」
僕の言葉にみんなが頷き、先頭をショーキ、間に女子三人とシーヤを挟んで最後尾が僕で進む。
「ウオッ! な、何だこれは!」
「す、滑る! 立ってられねぇ!」
「クソッ、罠か!?」
かすかに聞こえる悪態に僕はほくそ笑む。フフフ、どうやら上手くいったようだね。
愛のローションは味方には作用せずに僕らに邪な気持ちを持つ人にはヌルヌルと絡みつくんだ。
あ、でも僕らが
敵に対しては必要以上に絡みついて滑らせるって事なんだ。
「ジータ、何をしたの?」
セーナに聞かれたから僕は素直に答えた。
「
「さすが、ジータね。そんな使い道があったなんて知らなかった」
「セーナも自分の技能を確認する時間を作ろうね」
「うん、でもジータと一緒に確認したいな、なんて……」
か、可愛い! なにこの可愛い女子は!! もう魔獣の森に行くまでにセーナのこの顔で五回は
「おい、そこのバカップル。時間稼ぎが出来ていても他にも仲間がいるかも知れないんだから急げ」
シーヤに突っ込まれ正気に戻る僕とセーナ。
「そ、そうだね。急ごうか」
そうして村外れだったのが幸いして直ぐに村の外に出た僕たちだったけど、問題なのはここが村の北側だという事。
「南に向かいたいけど、どうしようか?」
僕の言葉にシーヤが目を閉じて少し考え込む。
「こっちだ。こっちに行けば南側に向かって行けるようになるはず」
シーヤ、凄いね。本当に頼りになるよ。ほら、何も言わないけどショーコなんてポーッと頬を赤らめてシーヤを見てるよ。
僕たちはシーヤを先頭に先を急いだ。暗い道だけど、僕とセーナの
それから僕は時々、道に
だけど問題は前方からやって来てしまった……
「ゲッヘッヘッヘッ、見つけたぞ! おい、こっちにいやかるぞ、早く集まれ!」
馬車で一緒だったオジサン、いやもうオッサンと呼ぼう。オッサンが僕たちの進む方向からやって来てしまったんだ。オッサンの後ろには三人のオッサンたちもいる。
「馬車で見かけた時からお前ら三人なら高く買い取って貰えるとふんでいたんだ。大人しく三人を俺たちに差し出すなら男のガキ共は逃がしてやるぞ、どうする? 俺たちはレベル15だからな。お前らでは相手にならないぞ、ゲッヘッヘッヘッ」
うん、女子たちを奴隷商に売るために目をつけていたと白状してくれたよ。それなら遠慮はいらないね。
「シーヤ、下がって。僕が何とかするよ」
僕の言葉にシーヤが下がる。前に出た僕を見てオッサンが言う。
「何だあ? ひょろっこいガキが一人出てきて何とか出来るつもりか? ゲッヘッヘッヘッ、何かするならやってみな? 最初は抵抗しないでいてやるよ!」
油断大敵だよ、オッサン。僕はお言葉に甘えて
「チョーーメーーチョーーッメーーーッ!!!」
僕の両手から放たれた大量の愛のローションがオッサン四人を弾き飛ばし、その体に絡みついた。
「グボォーッ!」
「グェラバァーッ!」
「オグラバーッ!」
「オガァチャーン!!」
何か喚きながら六メートル以上吹っ飛んだオッサンたちは、愛のローションにより立ち上がれない様子。
「良し! さあ今だよ、行こう!」
僕の言葉に僕を先頭に駆け出す。こうして何とかオッサンたちを躱して僕たちはその場を逃げ出す事に成功したんだ。
しばらく走ると分かれ道に出た。シーヤがこっちだと左の道を指し示したからそちらに向かって更に走る僕たち。
二十分ぐらい走ってようやく一息いれた。
「ハアハア、ジータ、アレはどれぐらい持つんだ?」
シーヤが愛のローションの効き時間を聞いてきた。
「ローション効果は追加で出さない限り一時間できれるよ」
「そうか、それならもう少し先に進んだ方が安心だな。こっちは魔獣の森方面だから、こっちに逃げたとは思われないかも知れないけど、念には念を入れて、あと五分休憩したら小走りで進もう」
「うん、分かった。セーナにショーコにタマキは大丈夫? まだ走れる?」
「うん、私たちはまだ大丈夫だよジータ」
その返事を聞いて僕たちは五分休憩した後にまた小走りでその場を後にした。
そして、森の入り口が見えてきた時にシーヤが
「ハアハア、こ、ここまで来たら多分、だけど、もう大丈夫、だと、思う…… しかし、みんな、ハアハア、な、何で息切れ、して、ないんだ?」
ハアハア言いながらそう言った。僕たち六人の中でハアハア言ってるのはシーヤだけだった。僕とセーナはシーヤに言う。
「せっかく
僕の言葉が衝撃だったのか、驚いた顔でみんなを見渡すシーヤ。
「お、お前ら…… 凄いな…… いつのまに……」
そのままシーヤは何事かをブツブツと言ってたけど、急にトイレに行ってくると言ってその場を後にした。
ちょっと心配になった僕はその後をコソッと追ったら、遮断をかけた状態で木の陰に隠れて
「大を催したみたいでちょっと戻るのが遅くなりそうだから、ここで待ってようか」
僕の言葉に頷く四人。それからしばらくして、ちょっとスッキリした顔でシーヤが戻ってきた。どうやらレベルアップもしたようだね。
「よし、それじゃ森の外周を進みながら野営出来る場所を探そう」
すっかり元気になったシーヤの指示に従って僕たちは先に進む事にしたんだ。さあ、何処かいい場所が見つかるといいな。
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