第6話 第一の街で宿泊だ!
僕たちは野営に必要だと思われる買い物をした。シーヤの雑学王に頼って知識にある物を購入したんだ。その時にシーヤたちもこの世界で普通の服を購入したよ。で、シーヤたちの着てた服は何と買い取って貰えたんだ。服は一人二万テンで売れたんだよ。臨時収入だと四人は喜んでたよ。
ああセーナの上着と僕のTシャツも売れたよ。上着だけだから五千テンだったけどね。
そして東のヒーニンゴム神聖国に行く乗合馬車に乗ったんだよ。ヒーニンゴム神聖国までは五日の行程らしくて、途中にある街や村で宿泊して早朝に出発するらしい。宿代なんかは当たり前だけど自分持ちだし、昼休憩の時の昼食も用意する必要があったからそれらの買い物もしたんだ。
タマキのアイテムボックスに入れて貰ったよ。僕とセーナもアイテムボックス持ちだけど、僕の方には野営道具一式を、セーナの方には調理器具一式を入れてある。
「やっとこの王国から出られるな」
「そうだな、ジータ。それでヒーニンゴム神聖国ではどうするつもりなんだ」
打合せ通りにシーヤがそう聞いてくる。この乗合馬車には多分だけど商業ギルド関係者が乗っていると思ってるんだ。
あの部屋でシーヤが僕たちに黙ってろって言ったのは、シーヤの技能遮断の副効力によって、盗聴器が仕掛けられてるのが分かったからなんだ。
商業ギルドとしては城から追放されたとはいえ、これまでの勇者からは莫大な利益を得た。だから僕たちの事も放置する事なく、利益を産み出しそうならば直ぐに連絡を取れるような状態を保っておきたいと思っているのではって僕たちは考えているんだけど、そんな監視されてるような生活はゴメンだから、何処かで撒けたらいいななんて思ってるよ。
僕とセーナの
この乗合馬車には二人が僕の
「シーヤ、先ずはギルドに行ってどんな物が商売になるのかを確認するよ。それで商売を始めてある程度のお金が貯まったらみんなで住める拠点を買うか借りるかするつもりだよ」
僕の言葉に五人がフンフンと頷く。そして、二人のうちの一人の肩がピクッと動いたのを僕は確認した。どうやらあの人が商業ギルド関係者だね。
僕はコソッとシーヤに合図を送った。それを見てシーヤが頷く。
さてと、もう一人はどうなのかな? ひょっとして王国からの追手かもとは思ったけど、どうも雰囲気からして違う。
うん、このオジサンはどうやら女子たちを狙ってるみたいだね。顔を下に向けてるけれども視線が時々、セーナやショーコ、タマキの方に向いてるのが分かったんだ。
このオジサンも途中でどうにかしないとダメみたいだなあ。
それでも馬車は順調に進んで、今日の宿泊予定の街に到着したんだ。パイプカット王国内の街で王都からも比較的に近いからか人も多くいるみたいだ。
「それでは皆さん、明日は朝の五時半に出発しますので時間に遅れないように注意して下さい」
馭者さんが乗っていた僕たちを含めて乗客にそう言って解散となった。
僕らは商業ギルド関係者と女子狙いのオジサンから離れるように他の乗客と一緒に動く。
馬車内でショーコと仲良くなった女の子がオススメする宿に向かったんだ。
「ここよ、ショーコちゃん。私の叔父と叔母がやってる宿屋なの。警備にも気を使って冒険者を雇っているから安心安全なんだよ」
【お気楽亭】と看板に書かれた宿屋は清掃も綺麗にされていて、宿代も三人部屋なら一泊一人五千テンで、夕食、朝食付きなんだって。
中に入ると本当に武装した人が立っていて、ショーコちゃんと一緒に入った女の子に声をかけてきた。
「おう、ナルハ! 久しぶりだな。ちゃんとお客さんも連れてきたんだな」
「ゼームスさん、久しぶり〜。まだ居てくれたんだ!」
「ああ、実は今年の春に俺たちのパーティーは冒険者を引退してな。この宿屋の専属護衛として雇われる事になったんだ。今日は俺とアニスが当番なんだよ」
などと会話をしてる二人を眺めてたら、奥から声が聞こえた。
「ナルハ、お客さんを連れてきてくれたならちゃんとご案内しておくれよ!」
「あっ、いっけない! ゴメンね、みんな。さっ、行こう。ゼームスさん、また後でお話を聞かせてね」
ナルハちゃんについていき受付に向かうとどこかしらナルハちゃんに似た女性が待っていた。
「ゴメンなさいね。この娘ったらお客さんを放ったらかしにして」
「いえいえ、久しぶりに会ったなら会話も弾みますよ。それで、三人部屋を二つお願いしたいんですけど空いてますか?」
「はい、大丈夫ですよ。一階のあちらの廊下の一番奥の二部屋が三人部屋となってます。こちらが鍵です。お一人五千テンをお願いします」
僕は事前にみんなから預かっていたお金を女将さんに手渡した。
「はい、確かに。夕食は午後六時から九時の間に食べられます。それと大浴場があって、午後六時半から八時までの一時間半は女性が、午後八時から九時までの一時間が男性となってます。利用には五百テン必要です。利用されますか? タオルや石鹸などはこちらで用意したものを自由にお使いいただけます」
「はい、利用します!」
僕たちは即答したよ。だって地球では毎日お風呂に入ってたからね。この先は入れるかどうか分からないから入れる時に入っておきたいし。
洗濯については問題ないんだ。僕かセーナのアイテムボックスに入れて取り出すと新品になって出てくるからね。
それは全くの偶然で分かった機能なんだけどね。
何気なく買い物してる時に買った食べかけの串焼きを後で食べようとアイテムボックスの中に入れたんだけど、食べようと思って取り出したら食べた筈の肉がちゃんとあったんだよ。
で、セーナとタマキのアイテムボックスでも試してみたんだけど、セーナのアイテムボックスは僕と同じだったけどタマキのアイテムボックスはダメだったんだ。
なので、男子の服は僕のアイテムボックスに。女子の服はセーナのアイテムボックスに入れる事に決まったんだよ。
こうして宿も決まって僕たち男子の部屋に女子たちも集まって今日の事を話し合う事にした。夕食までまだ一時間ぐらいあるからね。
「それでね、商業ギルドの関係者はあのお兄さんで間違いないと思うんだ。で、問題なのはもう一人のオジサンの方で、どうやら女子たちを狙ってるみたいなんだ。自分の性癖を満たす為なのか、奴隷として攫う為なのかは分からないんだけどね」
僕の言葉にみんなが憤る。
「そいつが何か行動を起こす前にどうにかしてやりたいな」
シーヤがそう言うけどそれは難しいと思うな。人から見たらそのオジサンの悪意はあくまで僕の印象でしか無いしね。
「まあ、とにかくそういう訳だから女子だけでは行動しない事。必ず誰か一人は男子が一緒にいるようにしようと思う。それは女子には悪いけどトイレに行く時もだよ」
「で、でもジータ。それなら私の
「うん、確かにそうだけど。セーナは人に向かって
「そ、それじゃ、こうしましょうよ。私がトイレに行く時はジータに、ショーコがトイレに行く時はシーヤに、タマキがトイレに行く時はショーキについて来て貰う事にしましょう」
おおーっ!! こ、これは妄想を膨らます絶大なるチャンスが到来だ!! と内心で思ったらシーヤが余計な事を言い出したんだ。
「いや、女子がトイレに行く時は俺が行くよ。遮断をかけてあげられるからな」
「「シーヤ、よろしくね!!」」
セーナ以外のショーコとタマキがそう言うからセーナも頷いていた。
けどセーナの目が少し残念そうに見えるのは僕の気の所為じゃないはず。セーナはちょっとMっ気があるからね。実は僕に側にいて欲しかったんだと思う。という妄想を膨らます僕……
気づかなかったけどそんな僕をセーナ以外の四人が残念そうに見てたらしいよ。
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