エピローグ 唯一無二のサイドキック

「あれ、放送室の……」

「えーまじ?じゃあその隣の子って……」


 クスクスと笑い声が聞こえる。


 だけど不思議だ。全然痛くない。


 貴女と、佳奈といるからかな。


 後夜祭のキャンプファイヤー。日も落ち、煌々と輝いている。

 そんな炎を見ながら、佳奈と二人でいた。


「よく燃えてるね〜」

「うん……綺麗……」


 見惚れてしまっていて、なんだか妬けてしまう。


 横から見る佳奈の瞳はキラキラと輝いていて、キャンプファイヤーにも負けないくらいに綺麗だった。まあ、こんなこと恥ずかしくて言えないんだけどさ。


「この炎は、沙織ちゃんなんだよ」


「え?」

「私を照らして、私を惹き付ける。そんな沙織ちゃんは、私の中ではキャンプファイヤーみたいに大きくて、‪”‬大切‪”‬なんだよ?」


 そういう佳奈の顔は、ぼっと紅潮する。

 それを言うなら、私だって。


 私が炎なら、佳奈は――


「佳奈は、この夜空だよ」


「……スケールが、大きいね?」

「んもう! いいの! ……佳奈はさ、夜空のように私を包み込んでくれるの。夜風のように佳奈といると落ち着いて、安らぐ。それくらい佳奈は私の‪”‬特別‪”‬なんだよ?」


 ――――――


 私といい勝負出来るくらい、彼女の顔が紅くなる。

 キャンプファイヤーの光に照らされる彼女の顔は、笑っていた。


 私の好きな、沙織ちゃんの笑顔。作り笑顔でも、へにゃりとした笑顔でもない。彼女の本当の笑顔。


 ああ――この笑顔が見たくて、ここまで。


「弱虫で、臆病なこんな私――」

「こんな、じゃないよ」


 唇に指を当てられる。紡ごうとした言葉が遮られる。


「もっと、自信を持って?」


「うん……それじゃあ……貴女の特別の私は、これから‪も”‬‪特別”‬で居続けてもいいですか?」


「……もちろん!」


 過去、私は親友を失った。


 深く後悔した。


 不思議なことに気付けば過去に戻っていた。


 そして彼女と再び親友に――


「私の大切な親友は、これからも親友で居てくれますか?」


「はい、喜んで……!」


 柊佳奈と梔子沙織は、生涯無二の親友となったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時間跳躍のサイドキック ゆきさん @azuazu1101

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ