第10話 温室の彼女

 コンクリートのブロックに這う蔦がにょろにょろと動きながら蛇へと変化していった。尾にはまだ植物だった頃の名残が垣間見える。わさわさと葉を揺らしながらブロックにひっかかってぴんと体が伸びて頭が震えた。夕顔の花の蜜を舐めようと口の中で舌を動かす。柵を並縫いのように蔓を伸ばし続ける蔦、そこに編み込むように蛇も体を這わせる。そして蛇は夕顔の花弁を咥えて主人の元へ戻っていった。主人は墓石に水をかけるように蛇の頭にティースプーンで紅茶をすくってかけてやった。気持ちよさそうに目を閉じとぐろを巻いてしまう。道路を崩して生えている雑草、人形の目のぼたん、窓枠に置かれた指輪。次はどれが何になるのか。目を覚ました時何が起こるのか。指輪の目がパチリと開いたとき、生きているのは誰なのか。主人がそうでなかったら、目覚め損だろう。私は運が良かった。そう思うのは人形でも雑草でもなんでもなく、実は起きていた蛇である。

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