第9話 タイムスリップの波

 大風が吹いて川に小刻みに波が打つ。そのひとうねりはまるでプラネタリウムだった。めだかは尾をひらめかせ慌て浮いていた柳の葉は回転し水面もゆれる。盛りあがった波はそこだけ江戸時代まで時間が飛び、しかし当時も起こったことは同じだったため誰にも気づかれず現代まで戻ってきた。

 そのひと波が帰ってきたことを柳は迎え入れ、枝を強くしならせ葉をたくさん振り落とす。運悪く近くにいた鳥は雨のように降り注ぐ葉を避けきれず羽に積もり高度を落とす。夜には雨が降り冬には雪が降りそして私は意識を落とす。

 川の畔の柳はやはり異世界なのだ。天の川の畔の地上バージョン。空では星屑が降り注ぎ一際強い月光がおかえりと語りかける。地上では私がおかえりといってレコードをかける。流れ星がきらりと光る。少し離れた家では火をかける。根元が青い光である。知らず知らずのうちにこの世界は祝福しているのだ。この波の帰還を。

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