第8話 織姫の気づき
天の川には星屑が浮いている。近くて大きな月に吸い寄せられているため沈みきらず中途半端に浮いているのである。天の川は夜によく見える。きらめいているからである。しかし昼間もずっと流れ続けている川なのだ。明るい中の天の川もまた乙なもの。晴天の青緑色に紛れる星と、月を待つ気だるげな天の川を渡す橋が当人たちには不服だろうがなかなか悪くない。足を踏み入れたら真っ逆さまに深みにはまって落ちていく恐怖をうまく隠して仄暗い爽やかさが充満しているこの空気を吸いながら平気でいられるのは、息が詰まるほど絢爛豪華な御殿に住み慣れ、麗しい世界に生まれた十二単を身にまとう織姫くらいなのではないか。天の川の橋には欄干がない。落ちやすくなっていることに織姫は気づかない振りをして今日も扇子で口元を隠す。
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