第7話 晴天の温室

 まるで木漏れ日のようなやわらかな光が手のひらにすとんと置かれた。カーテンの隙間からである。

 葉子は軽く花瓶に入ったカーネーションに目を向けてから、光の置かれた手のひらを口元まで持っていき、ごくんと飲んだ。LEDライトのような養殖ではなく天然ものらしいまろやかさがとても良い。のどごしもよくて思わず目をつぶる。これでは夕食も期待できそうである。空のワイングラスを白く長い指でつまみ唇に当てた。小指には太すぎて落ちそうな指輪が引っかかっていたが、落ちずに済んだようである。藤色の透明な飾りは涙をゼラチンで固めたような形をしていた。白い窓枠の奥の植物園ではウツボカズラが口元の滑らかで見事な曲線をみせている。庭には芝桜が占領する。ひとつかふたつ、摘んでブレスレットにしようかしらと既に両腕には朝顔が巻きついて首元で突き抜けるような青い朝顔が咲き、眼鏡に蔦が絡む葉子は考える。お洒落なカフェにありそうな白いテラス席に座ってレモンティーを飲んだ。鮮やかなブロンズの波打つ髪には細い蔓が紛れている。それを切るハサミもサバイバルナイフもここには無いのである。

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