第5話 夕立と食器
明るい曇り空にはなんともいえない魅力がある。ずっしりとした曇天で、気分も重くしていくと思いきや不自然に明るい。そのちぐはぐさが妙に私を引きつける。きっと雲の上では太陽がさんさんと輝いているのだろう。仄暗い家の中では電気を付けようか迷って、結局外の明るさに任せることにした。カーテンの影が落ちる。テレビの影も、ものの影がじっとりと落ちていく。ぐるりと見渡すと、積まれたCDのケースや本、食器など。端々に影が落ちている。雨のようだ。そう思った時夕立が降ってきた。気持ちいいほどの大雨。すべてを注ぎ落としてくれる。傘を持って外に出て、くるくると回った。水溜まりの中に意図せず入ってしまって、靴の中がばしゃばしゃと鳴った。スカートが揺れ、袖が雨粒に触れ、傘にばしばし粒が叩き落とされる。この傘で食器を上から叩き割った時、同じような音がするのだろう。そう思って傘立てに傘をしまって着替えてソファにきちんと座る。影は相変わらず落ちていた。
何も動かず影だけ落ちる。逃げずに。雨粒も落ちていた。外のバス停は少し違って、落ちていた影に何かいた気がした。こういうものを気にしないことがここでの私の生きるコツ。
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