第4話 妖精のネックレス
妖精のネックレスという名前がレストランのメニューに並んでいた。しかも写真も載っておらず逆に想像がかきたてられる。美しいスイーツだろうか、ドリンク系かなと思いながら周りを見渡しても、特に誰か頼んでいる様子もない。せっかくなので注文してみた。純喫茶のお手本のような少し暗い店内にランプが灯る。革のソファに背を預けると、一気に体から力が抜けた。オルゴールがBGMとして流れてきて、その後ろから眠気がゆっくりと追いかけてくる。運ばれてきたものはパフェだった。自分の想像の範囲内だったことに少し落胆しながらも、口の中で解けるレモンアイスの酸味とビスケットのほのかな甘み、スイカのしゃりしゃりとした食感に空調が寒く感じるほど体が芯から冷えたのがよくわかる。
そういえば、妖精のネックレスという名前をどうして付けたのだろう。季節のパフェとかでもいいはずなのに。メニューを見直すと、変わらずその名は並んでいた。写真も無い、説明もない。でも想像はできる。ネックレスは、パフェに飾られたすずらんなんだろうと。葉と蔦を捩って編んで、輪っかにするのだ。きっときれい。
想像が少しのヒントを得て編み込まれていく。しかし未だ妄想の域を出ない。10個の文字が並んだというただこれだけ、連なった単語を想像で繋げていった。いつかは輪っかになることがあるのかもしれない。きっときれいだ。ただ、その輪っかになることも、きれいなことも、まだまだ想像でおわってしまうことだ。うつくしいままに。
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