第12話 切り拓く者

 俺はすぐにドローンを飛ばした。

 今飛ばせばすぐに追いつけるだろう。

 

 ドローン用強化パークである『ステルス』『静音』も取得しているので、簡単に見つかることもない。

 

 次に幾つか生産系のパークを取得してから、クロバナさんを連れて裏ギルドへと足を踏み込んだ。


「あんたは……ユウギデンジ……今日はどうした……」


 相変わらずカウンターに突っ伏している裏ギルドの受付嬢が俺を見ずに声だけ絞り出す。


「ちょっと頼みたいんだが、地下水路の地図はあるかい?」


「地下水路ならあるにはあるが……」


「ただでとは言わない、そうだな、こんなのはどうだ」


 俺はギルドカウンターの裏にあるキッチンへと勝手に入る。


「しょ、食事なら、十分だ……」


 ちらっとクロバナさんのことを見るってことは、受付嬢もあの串焼きの洗礼を受けたことがあるのだろう。少し不憫である。


「よし、完成だ」


「な、何だこの巨大な箱は……食べ物……じゃないな……?」


「これは除湿付き空気清浄機だ」


「なに……?」


 それをこの部屋に隅に設置する。電源は無いので代わりに魔力で稼働する魔力電源変換ユニットと蓄魔電池を組み込む。


 ハウジング系のパークはゲーム内ではお楽しみシステムだが、現実世界で使うと滅茶苦茶便利なパークである。


 スイッチを入れると小さな稼働音と共に、室内の悪臭と湿気を次々と吸い込んでいく。


「な、なんだ……部屋の臭いが……」

「なんかカラッとして、過ごしやすくなってきたねえ」


 クロバナさんと受付嬢は室内を見渡しながら感嘆の声を上げる。


「地下水路の武骨な男たちが集う酒場だ。臭いと湿気を整えれば過ごしやすいんじゃないか?」


 にやりと笑って受付嬢を見ると、ガサゴソとカウンターの下を漁って、大きな手書きのマップを取り出してくれた。


「ち、地下水路の地図だ……少し古いが……せ、正確だ……」


「ありがとう受付さん、それと少し聞きたいんだけど」


「な、なんだ……」


「ここにいる人って、表の国家運営ギルドに登録できなかった人たちなんだよね」


「そ、そうだが……」


 受付嬢は何故そんなことを聞くのかという顔で首をかしげる。


「裏ギルドのクエストって基本的には命がけの難易度で、国からの極秘任務や表の人がこなせない汚れ仕事しか来ないんだよね」


「ああ……あたしらも……結局、あいつらから……エサを貰わなきゃ、生きていけない……」


 歯ぎしりしながら答える受付嬢の話を聞いていたのか、酒を飲んでいた山賊のような男たちも小さく息を飲む。


「裏ギルドって言っても……所詮は……行き場を失った者たちが……利用されるだけのところ……役人や貴族が住みやすい……だけの……手伝いをしてるだけ……」


「分かった、ありがとう受付嬢さん、じゃあこれも置いていくよ」


 俺は腰のポケットから片手で持てるほどの武骨なトランシーバーを取り出して、受付嬢に渡した。スマホじゃなくてトランシーバーなのは、大きくて目立つし、何より俺の趣味としてレトロな形が好きだからだ。


「これは横のボタンを押すと離れていても、もう片方の同じ箱へ連絡ができる魔法の箱だと思ってくれていい」


 俺自身も同じトランシーバーを取り出して受付嬢に見せる。


「もしなんかのタイミングがあったら、これで俺に話してくれ、俺も話す事があると思う」


 受付嬢はトランシーバーを不思議そうに胸に抱きながら、水路に出ようとしている俺を呼び止めた。


「あ、ああ……わかった……けどユウギデンジ、お前……何をする気だ……?」


「そんな大層な事じゃない、ただ世話になった人たちが住みやすい世界にしたいって思っただけさ」



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🌸次回:第13話 新機能解放が解放されました↓

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