第10話 聖剣使いの副団長

「いるか、黒の魔女」

「何の用、ヴァイス殿」


 クロバナさんは勢いよくドアを開け放つ。

 明らかな機嫌の悪さでヴァイスと取り巻きの騎士たちを睨みつけた。


 クロバナさんと向かい合っているのがヴァイスだろう。

 真っ白な鎧に身を包み、おかっぱ頭の偉そうな雰囲気をまとう男性である。


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■ステータス

□名前   :毒牙のヴァイス(人間)

□レベル  :53

□職業   :聖剣使い

□ステータス:体力53、力53、魔力53、器用27、素早さ66、運66

□保有スキル:聖剣解放

□固有装備 :聖剣毒牙のヴァイパー

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「いい加減に王都の端に住むのを辞めて欲しいものだ。

 こうして話を聞きに来るだけで、私の貴重な時間を浪費しているのだから。

 この時間で私はいくらの民を救えると思う?」

「何の用かって聞いている」


「うっ……そんなに睨みつけるな。

 なに、近くのダンジョン《鉱山》のレベルが元に戻ったようだからな。

 クエストが完了したと思い、セブンス聖騎士団の副団長である私が報告を聞きに来てやったまでだ」

「ヴァイス殿に話すことはなにもない」


「仮にも王都からの極秘依頼だ。

 副団長である私に話す気がないとは言わせない」


 クロバナさんは聞こえるように『ちっ』と舌打ちをする。


「最下層に魔剣ファブニルがあった。

 ダンジョンを浸食して魔境化しようとしてたけど、折ったら戻った。以上」

「折っただと? 身体は何ともないのか」


 処理の方法があまりにも非常識だったのか、副団長様は驚きの声を上げる。


「身体?」


 ヴァイスのナメクジのようなじめっとした視線に気が付き、クロバナさんが睨み返すとヴァイスは小さく咳払いをした。


「聖剣使いなら知っていて当然の知識だ。

 色付きの魔女も当然理解していると思ったが、ふむ、教えてやってもいい、この副団長の――」

御託ごたくはいい、話して」


「うっ、ごほん、あれだ。

 聖剣は所有者に恩恵を与えるが、逆に魔剣は破壊した者に呪いをかける」

「呪いですって?」


 クロバナさんは後ろに控える俺をちらりと見る。

 俺自身は身体に変化はないので、小さく肩をすくめた。


「だが怪しげな術を使う色付きの魔女な。

 全く呪いの影響を受けてないように見える」

「それで話は終わり?」

「まだ目的の半分だ。本題はここからである」


 ヴァイスは後ろの騎士が取り出した手紙を乱暴にひったくって読み上げる。


「これは王の勅命ちょくめいである。心して聞くがいい」

「要点をまとめて」

「な、これは正式な依頼となる、そんなことは」

「まとめて」

「ぬ……つ、つまりだ」


 このヴァイス殿とやら、根負けするのが早いな。


「魔剣を低レベルダンジョンへ設置した犯人がいる。そやつを見つけろとの内容だ」

「犯人捜し、聖騎士団の方が人員はいるんじゃない?」

「何のための黒の魔女だ?」


 はあとクロバナさんは額を抑える。


「――分かった。次はどうしたら良い。

 命令するくらいだから、手がかりはあるんでしょ?」


「東に小さな村があるだろう。そこに魔剣の影響が見て取れる。

 調査し、足がかりにするが良い。

 完了したら、この副団長の私に報告しろ、次の命令を下してやる」


「分かった、じゃ、目の前から消えて反吐が出る。空気がけがれる」

「相変わらず威勢がいい事だ。

 だがそんな態度は社会に出ている者として推奨できんなあ。

 魔剣の件が片付けば、妹の症状を更に改善できるかもしれんというのに。

 そうは思わんか、黒の魔女殿?」


 ヴァイスはねっとりした笑いを残しながら、屋敷を後にしようとする。

 ――が、足を止め、思い出したようにちらりと俺を見た。


「しかし、いつからそんなデカい犬を飼いだしたんだ?

 あまりにもステータスが低すぎて認知できなかったぞ?」



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🌸次回:第11話 私にいい考えがある↓

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