第7話 世界を黄金色に染める

 魔剣ファブニルの過去の所持者たちは、俺のような無職のオッサンを無視して、さらに両手剣の魔力を高めていく。


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■ステータス

□名前   :魔剣の幻影

□レベル  :70

□職業   :魔剣生物科アストラル属

□ステータス:体力140、力140、魔力140、器用140、素早さ140、運35

□保有スキル:龍のあぎと・ファントム(※1体に対して力200%分の追加ダメージを与える同様の幻影がいる場合×人数分のダメージが発生する)

□状態   :魔瘴気強化バフ(※魔法生物科は全ステータスを30%上昇)

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 この低レベルダンジョンで結構な、能力値じゃないか。

 幻影の保有スキル【龍のあぎと・ファントム】を使用する為、限界まで魔力を集めているのか、空気すら揺れている。


「障壁を張るから、私の後に!」


 クロバナさんが俺をかばうように背中へと押し込むが、あの人数の【龍のあぎと・ファントム】では、障壁が耐えられる保証はない。


 なら。


「――俺の方が早い」


 メニュー画面を展開し、目星をつけたパークを次々とタップしていく。

 鉱山スライムで稼いだパークポイントを惜しげもなく使う。


:拳法1→5(※流水の型自動発動)

:縮地1→3(※ターゲットとの距離を一瞬で詰める

:クリティカル1→5(※クリティカル発生時の倍率向上)

:マインドブラスト1→5(※アストラル属性に対してダメージ特攻)


 そして――!

 ナイトブレードライダー4099シリーズ最大の特徴であるパークを開放!


:肉体改造 解放


「からの――」


:肉体改造 右脚強化

:肉体改造 左脚強化

:肉体改造 右目強化

:肉体改造 左目強化

:肉体改造 右腕強化

:肉体改造 左腕強化

:肉体改造 脳強化(※認識率強化)


 サイバーパンク世界では人体改造によるキャラクター強化だが、このファンタジー世界に置き換えると、『超強化バフ』として認識されるらしい。







 さあ準備は整った、世界を黄金色に染めるんだ――!!!!!!!!






「「「サイバネティックシステム――起動!」」」


 魔力の流れが全身へ行き渡り、黄金色の光が身体を走りだす。

 瞳は高魔力に染まり、黄金の輝きを放つ。


 全身は羽のように軽く、世界がスローモーションに見える。

 認識力が向上して、情報処理能力が高まっても、脳がはち切れんばかりの悲鳴を上げる。


 ハイになる。

 停止した時間の中。


 拳法5による【流水の型】が発動し、上流から下流へ流れる川のように、残像を残しつつ、幻影達へ、一撃必殺の拳や蹴りを放つ。


 クロバナさんには速すぎて何が起きているか理解できないだろう。


 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とう――。


 途中から幻影を数えるのを止める。

 めんどくさい。


 脳が熱を持つ。

 両手剣が振り下ろされる前に、急所を突き、生命活動を絶つ。


「な、何が起きたの、あいつは?」


 戸惑うクロバナさんの横に俺が戻ったのは、魔剣ファブニルが幻影を生み出さなくなった時だ。


「もう打ち止めか魔剣さんよ。

 80人くらいか、あまりに薄いなお前の歴史は」


 肉体強化に合わせて性格すらも強気になったような気がしないでもない。

 勿論、俺の質問に魔剣は応えない。


 俺は縮地を使用して距離を詰め、魔剣を地面から瞬時に抜く。


「クロバナさん、こいつはどうしたら良い!」

「折って!」


 返答に合わせて、戸惑うことなく俺は魔剣ファブニルを折った。

 両手に持ってから膝で真っ二つに。


 悲鳴にも似た声は鉱山内に消えていき、剣からは瘴気が溢れ、魔力が世界へと還っていく。


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パークポイント:70入手×4(低レベルで魔剣破壊ボーナス)

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◆【初の魔剣消滅】

※実績が解除されました。


「サイバネティックシステム――終了」


 俺の一声で体中を巡っていた魔力が無散し、瞳の輝きも失われていく。


「ふう、ゲームでは体験してたけど、自身で体験すると、こんなにも疲れるんだな」


 額の汗を拭い、クロバナさんに手を差し出す。

 彼女は魔力切れを起こしているのか、力なく地面にへたり込んでいた。


「く、黒の魔女がへたり込んでたなんて、誰かに喋ったらその舌を引っこ抜いて甘じょっぱいタレに付けて美味しくいただいてやるんだからあ」

「おー、怖い」


 冗談めかしに彼女を引っ張り上げるが、かなり魔力を消耗しているのか立つ気配もない。


「あ、やば、周囲の魔力も空っぽみたいだから、魔力吸収スキルも役に立たないみたい……」

「やっぱり一人で逃げないで良かったみたいだ」

「ひゃっ」


 動けないクロバナさんを背中に背負い、俺は鉱山から出口を目指して歩き出した。


「お、おろしなさいってば」

「歩けるようになったら教えてね」

「れ、レベル1に背負われてるなんて知られたら、あーもう!

 少し寝るから、後で詳しく教えてよ、その力……そういえばオジサン、名前は?」


「デンジ――ユウギデンジ、この世界ではただの無職だよ」

「ユウギ デンジ。そう、変わった名前。じゃ寝るから」


 そう言って彼女は、噛みしめるように何度か名前を呟き、小さな寝息を立て始めたのだった。


◆【初ダンジョン攻略】

※実績が解除されました。


『ようこそ、組織(アンダーグランド)ルートへ』

※組織ルート → START



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🌸次回:第8話 いつか使うかもしれない、それが罠です。↓

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