第2話

と不思議そうな顔をする。

老人は続けて

「素性が分らんから取り合えず自己紹介でもするかの。私は仁という。歳は今年で六十になる。」

と言い、自分に顔を向ける。

何か話そうとしたが全く話せない。

名前も思い出せない。

「すいません、名前が思い出せなくて。何をしてたかも覚えてないです。」

女性はため息をつき、

「じゃあ、私が話すわ。私は洋子よ。都内で会社員をしてたわ。今はもう辞めたけど。」

と簡潔に話した。

とりあえず名前はわかった。

しかしそれだけだった。

どうすればいいか分からず、暫くの間沈黙が流れた。

老人は

「一時的な記憶喪失かもしれないな。時間が経ったら思い出すかもしれない。

焦らないことだ。そういえば先程辺りを見渡したらドアが一つだけあった。

試してみたが鍵がかかってるみたいで開かなかったよ。

あとこんな紙が貼ってあった。」

と言い、私と女性にその紙を見せた。

「罪を告白せよ。」

何のことだ。まったくわからない。

自分は全く思い当たらないが二人を見てみたら、老人は

「あれは誰にも言ってないし知られてないはずだ。」と体を震わせ、女性は

「私は悪くない。悪くない。」

と爪を噛みながら同じことを繰り返している。

一体何をやったんだ。自分も思い出そうとするが、そのたびに頭痛が起きる。

2人に何があったか聞いてみたかったが、今はそんな雰囲気ではないので、落ち着くまで待つことにした。

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