第3話「影の力の発見」

 俺の名前は高橋翔太。普通の冒険者を目指すが現在は無職だ。なんせ異世界に来てまだ数日なのだ。

 村の生活が少しずつ落ち着いてきた。

 毎日、ルーカスに剣術を教わり、エルナと共に練習する時間が楽しくなってきている。正直、最初は緊張していたが、仲間たちと過ごすうちに、少しずつ自分に自信が持てるようになってきた。

 今日は特に晴れた日だ。村の外れにある訓練場で、ルーカスとエルナと共にトレーニングをすることになっている。

 さあ、今日は何を学ぶんだろう?と訓練に前向きになっている自分に気付いた。

「ショウタ。今日は影の使い方を教える」

 ルーカスがそう言った。

 影?

 それは一体何だ?

 思わず眉をひそめる。影を使うなんて、自分には無理だと思ったが、ルーカスの真剣な眼差しを見てその考えは消えた。

「影を使うには、まずは心を落ち着けることが大事だ。自分の内にある力を感じろ」

 ルーカスが続ける。

 心を落ち着ける? 

 うん、まずは深呼吸だ。ゆっくりと息を吸い込み、吐き出す。そうするうちに、周囲の音が少しずつ遠のいていく。心の中が静まっていくのを感じる。

「いいぞ、その調子だ。次は、影を感じてみろ。何か特別なことをしようとする必要はない。ただ、感じるだけだ」

 影を感じる? 

 それがどういうことかわからない。でも、試してみるしかない。目を閉じて、周囲の影に意識を集中する。すると、徐々に影が俺の周りに集まってくるような感覚があった。

「ねえ、ショウタ」

 エルナの声がかすかに聞こえる。目を開けると、彼女が驚いた表情を浮かべていた。

「影が……動いてる」

 俺自身も驚いた。無意識のうちに、手をかざした先の影が動き、まるで生きているかのように動いているのだ。心臓が高鳴り、興奮が全身を駆け巡る。

「もっと強く影を意識してみろ。自分の意志を込めるんだ」

 ルーカスが叫ぶ。

 意志を込める? 自分の力を信じて、影を操ってみよう。俺は心の中で強く思った。「影よ、動け!」

 強く思うどころか大声で口にしてしまった。

 すると、影がさらに活発に動き出し、まるで俺の指示に従っているかのように見えた。驚きと興奮が混ざり合う。こんな力が自分にあったなんて、全く想像もしていなかった。

「ショウタ。すごい! 影を操っている」

 エルナが目を輝かせている。

「本当に、こんなことができるなんて信じられない」

 俺は声を上げた。

 そんな俺を見てルーカスも満足そうに頷く。

「お前にはこの力がある。これからもっと練習して、影の力を極めていけ」

 その言葉に、自信が湧いてきた。俺はただの無職だと思っていたけれど、少しずつ自分の能力に気づいていく。影を操る力を持っているなら、きっと冒険者として仲間を助けることができる。

 練習を続ける中で、影の使い方を徐々にマスターしていった。

「いいぞ。ショウタ」

「頑張って。ショウタ」

 仲間たちと共に過ごす時間が増えるにつれて、絆も深まっていく。エルナの笑顔、ルーカスの真剣な表情、全てが新たな力となって俺を支えてくれる。

 その夜、訓練を終えた後、村の広場で焚き火を囲んで仲間たちと共に過ごした。火の明かりが温かく、空には満天の星が輝いている。

「ショウタ。今日は本当にすごかったね」

 エルナが嬉しそうに言った。

「影を操れるなんて、君は特別な力を持っているんだ。自信を持て」

 ルーカスも微笑んでいる。

 その言葉に、俺は少し照れくさくなる。自分に特別な力なんてないと思っていたけれど、少しずつ自信が持てるようになってきた。これからの冒険が楽しみだ。

「明日も頑張ろう」

 俺は心からそう思った。仲間と共に過ごす日々が、俺にとってどれほど大切なものか、少しずつ実感している。これからも、みんなと一緒に冒険していくんだ。

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