第16話 5on5 後編 ホーディに笑いホーディに泣く

 ダイジロウさんと僕の初対戦は、なんと僕の勝利であった。


 当時彼は白ヒゲを握っており、相性有利であるヤマトに負けるゆえんはなかったが。


 ヤマトのリーサルターン前。強力なカウンターカードである『ラディカルビーム』を発動させるため、ダイジロウさんはドンを起こしてターンを終了していた。


 ここでひとつ、ヤマトのエースカードである『7ホーディ』の能力をおさらいしよう。


『相手のキャラかドンを合計2枚までレストにすることができる』


 つまり、相手のアクティブドンすら寝かせることができてしまうのだ。


 このことを見落としていたダイジロウさんは、僕に敗北を喫した。


 有頂天になった僕は小一時間、みなに自慢し続けた。


 ホーディは本当に優秀だ。

 相手のブロッカーを寝かしつつ、速攻でリーサルをもぎ取る。縦置きのキャラを取るのにも役立つ。


 対エネルや青ナミ、ベガパンク相手に自傷できるのも強い。


 緑デッキ随一のパワーカードであり、4投確定枠。


 僕はこいつに何度も救われてきた。


 魔王討伐も、スタバ初優勝もこいつがいなければ有り得なかった。

 

 実際、鬼ヶ島CSの一回戦、二回戦目では、トップでホーディを引けていなかったら、5サボ4ボルサをレストにすることができず負けていただろう。


 ただ難点もある。

『サーチ手段がない』


 当時のヤマトは空島型が主流。

 魚人であるホーディをサーチする手立てがなく、己の運のみで引っ張ってこなければいけなかった。


 当然、運が悪ければ一枚も来てくれない。


 鬼ヶ島CSトナメ一回戦も、僕のホーディはじゃじゃ馬だった。


 対戦相手はエネル。

 ただでさえ無理対面であるのに、さすがは予選突破者。プレイスキルも尋常でなかった。


 後から知った話だが、別ゲーである『デュエマ』のレートが、いっとき世界一位になったというほどの実力者だ。


 ただ僕も奮闘した。トリガー運に恵まれ、おナミバニッシュも決まって。


 最後に一枚、ホーディを引けていたらワンチャンという盤面までことを進めていた。


 引けなかった。

 敗北した。


 チームはそのまま三敗し、トナメ一没となった。


 原因ではないが、敗退の遠因になってしまった出来事がある。

 

 ダイジロウさんが勝てばチームの勝利という盤面。対戦相手はミラーである緑ボニー。


 お互い一歩も引けを取らず、どちらが勝ってもおかしくない状況。


 次耐えればダイジロウさんの勝利という盤面で、僕は内心叫んでいた。


『ホーディケアしなまずい!!!!』


 ホーディはなにもヤマトだけの専売特許じゃない。 


 カード単体として強力なため、当然ボニーにも入ってくる。


 ダイジロウさんだって理解していた。

 だがチーム最後の一人、大規模大会、残り時間はわずか。


 そういった極限状態がダイジロウさんの計算式を狂わしてしまった。


 ホーディケアを失念してしまったのだ。


 相手はしっかりと手の内のホーディでミスをとがめ、ダイジロウさんは敗北。


 つくづくホーディに笑い、ホーディに泣かされた1日だった。


 ミラー戦以外負けなしだったダイジロウさんは、相当この敗戦が響いたのだろう。


 もう二度と、ホーディケアを怠ることはなかった。はた迷惑な話である。


 決勝トーナメント敗退。

 一位を狙えただけに悔しかった。


 実際、今大会優勝チームに唯一泥をつけたのは僕らだった。


 予選にて、優勝チームを下していたのだ。


 カードゲームはときの運。

 いくら強くても負けるときは負ける。


 ならばこうとも言える。


『弱い僕でも、勝てるときは勝てる?』


 この日初めて、僕は『フラシ優勝』という高い目標を、明確に考え始めていたのだった。


 そんなことより、チーム戦が楽しすぎるんだが!?


 次回、『フラシ優勝までの道のり』に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る